キリスト教の教えに基づく「愛と誠」を校訓に掲げ、多角的でグローバルな視野と豊かな知性の育成を目指す横浜女学院。英語で各教科の内容を探究的に学ぶCLIL(クリル)では、英語力だけでなく、さまざまな立場から考える力を伸ばしている。
鯉渕健太郎教諭
各教科の学習内容と英語を組み合わせ、「英語で」学び、考える力を伸ばすCLIL(内容言語統合型学習)を他校に先駆けて導入している横浜女学院。同校のCLILは多文化共生や世界平和などの国際問題を積極的に扱い、SDGs的価値観を大切にしていることが特徴だ。
例えば、世界平和の授業では、自分たちのミニ世界平和地図を作る課題から始まり、「世界平和ランキングが上位の国はどこか」「そもそも平和とは何なのか」などの問いに英語で答え、話し合う。積極的に英語で議論する生徒たちも、英語を学び始めたのは中学からが大半だ。CLILを担当する英語科主任の鯉渕健太郎教諭は「中3から継続的にCLILに取り組むにつれ、英語で授業を受けたり、学んだりすることへの抵抗はほとんどなくなります」と手応えを語る。
ある時、CLILを受けた生徒たちから「自分たちもCLILの授業をしたい」という声が上がり、生徒たち数人が異文化理解や多様性をテーマに他学年の生徒たちに自主的に英語で授業を企画し、反響を呼んだ。
「まさにラーニング・バイ・ティーチングですね。英語で何かを伝えようと思って、行動を起こす生徒が出てきたことは教師冥利に尽きます」(鯉渕教諭)
CLILでの学びを生かせるよう、生徒が英語で世界とつながる海外研修などの機会も豊富に用意されている。例えばニュージーランド海外セミナー。同国における先住民族であるマオリ族との共生について、CLILで学んだ後に現地校へ行き、通学やホームステイを経験する。
「学ぶことで当事者意識を持つようになり、現地で刺激を受けた生徒の中には帰国後、教員に本を借りて自主的に勉強したりする生徒もいます」と鯉渕教諭。
「他者の視点も考えて」
世界を見据えて問い掛け
キリスト教の教えに基づく「愛と誠」が校訓で、学校生活を通じて身に付けてほしいコンピテンシー(行動特性)には「他者と協働する」「多様性を尊重する」「当たり前を疑う」などが並ぶ。
高2で広島・京都に総合セミナーに行く前には、米国の歴史教科書を英語で読み、日本の教科書と比較する。
「異文化理解や多様性の尊重にはわれわれの当たり前を疑うことが大切です。米国の教科書を読み、米国人の視点に立って考えることで、新しいものの見方や価値観を知ります。こうした価値観は将来生徒たちが世界に出たときに必要なもの。単に原爆の悲惨さを嘆くのではなく、CLILではより客観的な視点で平和について考え、議論します」(鯉渕教諭)
英語力はもとより広い視野と思考力を兼ね備えて、生徒たちは「愛と誠」を持って世界への扉を開いていく。