「文化に貢献する有能な女性を育成する」という教育理念を掲げる女子美術大学付属高等学校・中学校。自由な雰囲気が生徒たちの発想と表現を引き出す。系列大学との連携も充実し、自分らしい生き方を後押しする。
並木憲明主幹教諭・広報部主任
「日本で唯一」という、美術大学付属の女子校。自由な校風で個性豊かな生徒が、自分なりの表現を追求している。
「どんな学校でも、教育方針に沿って生徒を変化させ、社会的にしつけることを行っています。でも本校は皆同じ方を向いたり、同化する必要はないとの考えから、いい意味で放っておく。『その子のまま大きくなる教育』を実践しています」と並木憲明教諭は強調する。
毎年秋に中高大で同時開催する「女子美祭」は、その個性があふれ出てくるような作品や催しがめじろ押しの一大行事だ。見学に訪れて「ここが私の生きる場所」と感激し、入学を決めた生徒も少なくないという。
「作品も誰かのまねではなく『どれだけ自分でいられているか、自分を出せているか』を、生徒たち自身が意識しています。美術という正解のない世界で何かを表現するプロセスは本当に大変です。でもそんな体験を、好きという気持ちで何年も続けてきた生徒たちは、自分自身を俯瞰(ふかん)する視点(非認知能力)が自然と身に付き、自律しています」(並木教諭)
美術教育を軸に、「豊かな感性を支える知性」を育むリベラルアーツ(教養)も重視している。2019年度にカリキュラムを見直した。独自の授業「アート・イングリッシュ」では、ネイティブの英語教員と共に芸術関連の用語や表現を学び、中学の3年間、高校の3年間を通じて自分の作品の魅力を英語でプレゼンテーションできるレベルを身に付ける。
テクノロジーの進化に伴い、人としての独創性が求められるようになった今、美術教育への関心はいっそう高まっている。独特な校風が人気を集め、志願者も増える傾向にある。
中高大の連携授業で
進路を見定める
卒業生の9割が美術系大学に進学。うち、系列への内部進学は8割を占める。
中高大の「連携授業」も大きな特色だ。中1から高3まで毎年、系列の大学・短大の教授陣による授業が組み込まれている。テーマは、「色について」「スペースデザイン」「美術史に学ぶ」など幅広い。
大学を訪れて進路を考える「キャンパス見学会」「夏休み体験学習」なども積極的に行っている。「少なくとも6人の教員と出会い、大学の空気に触れることで、『近未来の自分の姿』を見て、将来を見定めることにつながります」と並木教諭。
高2からは、「絵画」「デザイン」「工芸・立体」の3コースに分かれて、専門教員から高度な美術教育を受け、技術のみならず発想を磨く。美大の受験対策に縛られない付属校ならではの利点を生かし、大学で学びたい分野とは異なるコースをあえて学ぶ生徒もいる。
大好きな美術と一生関わるために「なりたい自分」を見つける環境が、女子美には整っている。