「自主堅正」の校訓を掲げる高輪中学校・高等学校。誰もが居場所を持てる穏やかさと自主性を重んじる校風で、生徒の「個」の確立を支える。意欲と学力を引き出すきめ細やかな指導で現役大学合格率は9割を超す。
平野 豊校長
2023年度の受験者向けに開かれた学校説明会。志望者と保護者を前に生徒たちが授業内容やクラブ活動など、同校の生活や魅力を熱心に語った。21年に創設された「学校PR部」のメンバーだ。
23年度、同部メンバーは中高計約100人まで増えた。「入学間もない中1も、大勢手を挙げてくれた。学校に誇りを持っているからこそだと思います」と平野豊校長はうれしそうに話す。
説明会で生徒が語った同校の魅力に「誰にでも居場所がある居心地の良さ」がある。11の運動部、16の文化部、10の同好会。同好会は、琉球三線(さんしん)、マケドニア研究、折り紙と多様な分野がそろう。専任教員率が高いのも、生徒が自分らしくいられる雰囲気づくりに一役買っている。1学年6クラスに、担任の他5人の教員が付き、高校卒業までの6年間、ほぼ同じ顔ぶれで学校生活の全般を支える。「『手は離すが目は離さず』を合言葉に、しっかりと見守りながらも、生徒たちの自主性に任せ、何事にも挑戦できる雰囲気をつくるようにしています」(平野校長)。
中3全員が参加する「西日本探訪」、高2全員がオーストラリアで現地校の生徒と授業を共にする「海外学校交流」など、国内外の体験学習が充実している。西日本探訪で向かった沖縄では「戦争を経験したお年寄りの話に真剣な表情で聞き入っていました。リアルな体験の大きさを改めて実感しました」と平野校長。体験を通じて物事の本質を探究していく生徒の姿は、「見えるものの奥にある見えないものを見つめよう」という教育理念に通じる。
進学実績が伸長
現役合格率が9割台に
中高6年間を三つの期間に分け「大学へ進学させるための指導」にも力を入れている。
中2までの「基礎学力徹底期」を経て、中3からは選抜と一般のクラス別に応用力を高める「進路決定・学力伸長発展期」に。高2からの「総仕上げ・進路達成期」では、適切な進路選択と志望大学入学を目指す。
今年度から高1の授業で、10カ月間のオンライン英会話レッスンも始めた。「中学ではネイティブの教員が生きた英会話の授業を行っています。そこで学んだ力を高1で発展させ、聞く力と話す力を定着させていきます」(平野校長)。
23年春の卒業生の現役大学合格率は約92%。初めての9割超えだという。国公立大学の現役合格は40人台を維持。GMARCHの合格者は229人から289人にグッと増えた。
「学校生活の多くに、コロナ禍による制限や困難がある中、できることを精いっぱい努力してくれた卒業生たちでした。本当によく頑張りました」。自主堅正の校訓を体現するような生徒たちの姿を、平野校長はそう振り返った。