トップの方針を形にする
PM式のプロジェクト

濱口 朗
船井総合研究所 執行役員
スタッフ統括本部 総務部長1984年、船井総合研究所に入社。コンサルタントとして数々の事業開発プロジェクトに参画。社内ベンチャーで事業受託会社「船井プロデュース」を設立した。スタッフ部門へ異動後、法務チームを設立し、IR担当も兼務。2010年より現職。

 船井総合研究所のスタッフ統括本部、総務部長の濱口朗氏は、2010年に行った大阪本社移転のプロジェクトリーダーを務めた。その経験から、オフィス移転を成功させる一つの条件として、「経営トップの方針を形にすること」を挙げる。

「10年は社長の交代もあり、新社長の思い、方針を伝え、変化に向けて意思統一する必要がありました。その一つのきっかけが大阪本社の移転です。創業の理念や歴史観という継承すべき部分と、時代に合わせて変革すべき部分をどう表現するかが、新オフィスのプランニングのテーマでした」

 企業でオフィス移転を行う場合、濱口氏のように総務部が担当することが多い。前図に示したように、移転プロジェクトには企画から設計・デザイン、施工管理、引っ越し、社員への新オフィスのルール通達、旧オフィスの原状回復など、さまざまなフェイズがある。

 いずれのプロセスでも、専門的な知識が求められる場面が多いため、総務担当者をサポートするオフィス移転事業者の存在がクローズアップされる。

 以前はゼネコンや設計事務所、オフィス家具・什器メーカーなどが一括して請け負うことが多かったが、最近はコストの透明性やデザインクオリティの向上を求め、オフィス移転事業者を利用するケースが増えている。

 主流になっているのは、企画段階からプロジェクトマネージャーが参加し、実際の移転までを、社内のプロジェクトリーダーを補佐・支援するPM(プロジェクトマネジメント)の手法。各フェイズの情報はプロジェクトマネージャーに一元化され、窓口が一つになるため、総務担当者の負担は軽減される。

「社内調整から各事業者との交渉、行政への申請など、やることは山のようにあります。オフィス移転事業者への依頼が多くなっていることは納得できます。コンサル的にやるところ、設計・デザインに特色のあるところ、移転後の運用支援、日常的な総務サポートの充実など、事業者によって強みと個性があり、移転の目的と、もっとも相性のいい事業者を選ぶべきです」

不動産仲介業者は
情報力と分析力で選ぶ

 またオフィスビルの選定に当たっては、不動産仲介業者の存在が大きな意味を持つ。賃貸するか、購入するかは、自社の資産・財務状況と収益力が判断材料となるが、候補物件の調査・分析に基づく評価をする際、専門性の高い情報力と分析力が欠かせないからだ。

「不動産仲介業者の選定に当たっては、豊富な情報力、分析力を重視すべきです。さらに自社の要望に基づいて、ビルオーナー側としっかり契約交渉してくれるところを見極める。また不動産契約の内容検討では、たとえば賃貸の場合、敷金・家賃・共益費などの経済条件だけでなく、万一に備えて途中解約時の条件など、細部にわたる検討が重要になります。こうした不動産契約について、適切なアドバイスをしてくれる事業者を選定すべきだと思います」

 オフィスは重要な経営資源であり、移転によって、「コミュニケーションを活発化させたい」「気持ちよく働いてほしい」と考える経営トップが増加している。成功させるには、トップが目的を明確にし、その方針を具現化するオフィス移転事業者を選定できるかにかかっている。