ドラッカーをして「最後の暗黒大陸」と言わしめた物流に対する認識が大きく変わってきている。ネット通販の拡大、そのユーザーの当日配送への欲求など、対応できた者こそが勝者となる。今後の企業成長の鍵、ヒントが物流革新の現場にあった。
ピーター・ドラッカーの名言に「物流とは、最後の暗黒大陸である」というものがある。経営課題を論ずるとき、最初に挙げられるのは営業力や研究開発体制の強化であり、ドラッカーの指摘通り、物流は後回しにされてきた感がある。
別の角度から見れば、暗黒大陸には開発や発展の余地が十分に残されており、ここ20年、物流を新たな経営資源として見直す動きが顕著だ。暗黒大陸は未来へとつながる入口であった。
当日配送に対応する
大型物流拠点が続々
さらに、昨年来、物流拠点の拡充や新設、物流システム革新の動きが加速している。
インターネット通販の拡大に対応するため、物流施設事業に本格参入する三井不動産は、今後6年間に2000億円を投じ、三大都市圏を中心に約20棟を建設予定という。良品計画は、同社最大の物流拠点、浦安センターが手狭になったため、埼玉県鳩山町に新たに建設する。大和ハウス工業も、全国の大都市近郊に大型物流施設を6~7カ所建設する予定だ。
こうした動きの背景にあるのが、インターネット通販の納期短縮である。リアル店舗での買い物感覚に近づけるため、翌日配達ではなく、今後は当日配達が顧客満足度を高める鍵になると考え、前線基地となる最新鋭物流拠点の整備が進む。
物流革命を起こしたネット通販のアマゾンを追撃すべく、楽天も兵庫県川西市に新たな物流拠点を開設。商品在庫の入出荷、保管、梱包、カスタマーサービスを総合的に代行する「楽天スーパーロジスティクス」サービスを提供し、納期短縮を図る。
物流を進化させることが
経営の「革新」に直結
大型の物流施設だけでなく、規模を問わず倉庫のあり方を見直す動きも目立っている。倉庫は物流という川の途中や川下にあるため、さまざまな問題が集積しやすい場所でもある。優れた部分だけでなくムダも集積されるということは、逆に、「改善の宝庫」でもある。倉庫から始まる物流改善という視点も、経営マネジメントに欠かせないものになっていくはずだ。
倉庫や物流拠点新設の動きが活発化すると同時に、物流不動産マーケットも堅調に推移。全国的に見ると、2013年は08年に次ぐ規模での賃貸スペースの大量供給が予定され、特に首都圏は過去最高の供給量となる見通しだ。
コストダウンだけでなく、スピードアップ、在庫減少によるキャッシュフロー改善を可能にする物流イノベーションは、これからが本番、無限の可能性を秘めた大陸と期待されている。