MapFanの情報・ノウハウを法人向けにも展開。
デジタル地図をより手軽に活用できる
環境を提供

インクリメントPの社名を知らなくても、その製品・サービスを知っている人は少なくないはずだ。長い歴史を持つデジタル地図「MapFan」や、大手メーカー向けカーナビで高いシェアを持つ会社だからだ。MapFanやカーナビで得た知見を基に法人向け事業にも力を入れる。さらに画期的なクラウドサービスも開発中だ。

 インクリメントPはパイオニアの100％子会社で、1994年の創業以来、カーナビへの地図データ提供や、「MapFan」シリーズなどのコンシューマー向けサービスに加え、地図ソフトなどの法人向けサービスにも注力してきた。パイオニアをはじめとする大手メーカー向けに地図データ提供やカーナビソフトの開発を行い、市販カーナビ市場でトップクラスのシェアを誇る。最近では、アップルのiOS純正地図アプリへの地図提供が話題となった。

 カーナビからスタートした会社だけに、道路地図に強みを持つ。取締役で商品部部長の河野氏はこう説明する。

「当社は車が通行できる全国の道路を2005年からしらみつぶしに実走調査し、今までに地球約100周分、走りました（延べ400万キロメートル）。実走調査時に撮影した写真も、15億枚を超えて日々増えています」

 蓄積した調査データからは、街並みの変化や過去の道路状況も机上で確認できるという。「事前調査した未来のデータをお客さまに届けることで、道路の開通日当日にカーナビに反映させることも実現しています」と河野氏。こうした網羅性の高い道路情報の取得は、高精度なナビルートの提供に大きく貢献している。

 もう一つの強みは、上流から下流までの開発体制だ。同社は地図データ整備とそれに必要な情報収集、サービスごとに要求されるデータ編集、アプリやウェブサイトに組み込むための部品化、それを使ったアプリの開発まですべてを自社で行っている。そのため、市場ニーズに合わせた柔軟な地図投資や開発投資を行えるのだ。

高度な地図データを
法人サービスにも

 95年発売のMapFanをはじめとし、同社のコンシューマー向けサービスは広く利用されているが、同社ならではのノウハウや強みを武器に、時代に合わせたコンシューマー向けサービスも積極的に展開。昨年11月にリリースした「MapFan＋（マップファンプラス）」というiOS向けの地図ナビゲーションアプリも好評で、100万ダウンロードに到達する勢いだ（画面左）。

 法人向けサービスも充実させている。96年発売の「MapDK」、97年開始の「MapFan onPage」は現在まで続くロングセラーである。

 MapDKは、地図ソリューションを開発するシステムインテグレータ向け開発キット。各種のシステムに精度の高い地図データを組み込める。大手タクシー会社の配車システム、トラックやバスなどの運行管理システムや位置情報を活用した営業支援システム、官公庁での防災システムなど、用途は多岐にわたる。

「物流分野なら、MapDKのルート検索機能を利用してさまざまな配送パターンをシミュレートした配車システムを構築でき、効率的なルート選択や運賃の適正化に役立ちます。特にルート検索の精度では高い評価を頂いています」（第二商品部第二グループの田野倉氏）

 ウェブ制作会社や企業のウェブ担当者が、サイト上で地図を使うときに利用できる地図のネット配信サービスがMapFan onPageだ。このサービスを使えば、毎月更新される最新の地図を自社サイトに組み込める。

 代表例が、多くの店舗を持つ飲食チェーンの店舗案内のページ。カレーチェーン「カレーハウスCoCo壱番屋」の店舗検索でも採用されている。その他、不動産の物件案内サイト、企業内で利用する旅費・交通費計算システム、自治体が公開する子ども安全マップなど、さまざまなシーンで活用されている。

 地図を表示する以外に、地点検索機能、MapFanの優れたルート検索機能なども利用可能。自社のイメージに合わせたデザインカスタマイズも可能だ。ＰＣ・携帯サイトはもちろん、最近はスマートフォン向けサイトでの採用が多くなっている。