システムもサーバーも止めない
「延長サポート」が世界のトレンド
「一つはOSの入れ替えです。ただし、SIerに依頼するならば時間もコストもかなりかかるでしょう。サポート終了期限から逆算すると、相当厳しい道のりです。Linuxに詳しいエンジニアがいれば、インハウスで取り組んで間に合わせることも可能かもしれません。ただ、どのOSに移行するかが難問です。CentOSの代わりになるほどのシェアをどのOSが確保できるか、まだグローバルでも趨勢は決まっていません。負けた方に乗ってしまうと、また短期間で別のOSに入れ替えなくてはならないからです」(鈴木執行役員)
そこで生きてくるのが、もう一つの選択肢となる延長サポートだ。CentOSはサポートを終了するため、セキュリティーベンダーなどが、代わりに独自の修正パッケージを提供している。
「この延長サポートが、世界のトレンドになりつつあります。Linux自体は十分に成熟していますし、CentOSは安定性も機能性も優れたOSですので、脆弱性対策だけが現状の問題なのです。サーバーの寿命も延びていますし、選択肢としては合理的です」(鈴木執行役員)
コスト面だけでなく、システムやサーバーの稼働を止めないというオペレーションの観点からも、延長サポートは有効な選択肢だろう。実はサイバートラストでは、この延長サポートを世界に先駆けて提供してきた。
「15年ごろからCentOSのユーザー数が非常に増えてきましたので、2世代前の『CentOS 5』がサポートを終了した17年には、延長サポートの提供を開始しました。当社は国内唯一の企業向けLinuxディストリビューター(Linuxの開発事業者)で、100人以上のLinux/OSS(※1)エンジニアを抱えているからできることでもあります(図3参照)」(鈴木執行役員)
図3 サイバートラストのCentOS延長サポート提供期間
Linuxに特化したユニークなポジションにいるからこそ、単にOSの入れ替えを促すのではなく、「少しでも長く利用したい」というニーズに対応した延長サポートを提供する発想になるのだろう。
なお、公共機関や各種団体などがCentOSサポート終了の注意喚起をしていることもあって、同社への延長サポートの問い合わせが急増しているという。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)も、日本OSS推進フォーラムによる注意喚起(※2)を取り上げている。
「教育機関や自治体の他、サービス業や小売店といった小規模事業者さまも多く、CentOSサポート終了問題の深刻さを改めて感じているところです。各種診断サービスもご用意し、自社の使用状況が分からないといったご相談にも対応していますので、まずはお気軽にお問い合わせください」(青山執行役員)
オンラインシフトが進んだ今、サイバー攻撃によるインシデントは、サプライチェーンだけでなく社会全体にダメージを与える可能性すらある。自社を含む社会全体の持続可能性を担保するためにも、使用するシステムを可視化してセキュリティー対策を講じるのは喫緊の責務だ。「CentOSサポート終了問題」は、その取り組みの強化に踏み出す好機とすべきだろう。
※1 Open Source Softwareの略。ソースコードを一般公開し、自由な使用、改良、配布を許可するソフトウエアのこと。Linuxは、最も広く用いられているOSSとなる
※2 日本OSS推進フォーラムによる注意喚起
URL:https://ossforum.jp/index.php/2024/03/14/202403-end-of-support-centos7/
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