同社はクライアントの課題やニーズを把握した上で、建築設計を主軸に、戦略立案からブランディング、さらに運用まで、全体を通して支援する。クライアントのニーズに沿った、最適かつ専門性の高いサービスを提供できるのが強みである。

 例えば、あるホテルが「解体新築」を考えていた案件があった。よくよく話を聞くと、耐震性能を現行の基準に合わせ、デザインを現在のトレンドに合わせることがニーズだった。検証を行うと、「外壁の補強」だけで耐震基準を満たすことが可能だと分かった。その手法では操業を止める必要もなく、コストを大幅に削減できる。「このホテルの場合、余った予算で内装をグレードアップし、より高い付加価値を持たせることも実現できたのです」(小山社長)。

クライアントに深くコミット、経営課題を解決する設計事務所【安川電機・安川テクノロジーセンタ】技術者がワンフロアで働き、創発が生まれる大空間を実現。ワークプレイスと実験エリアを複数階にわたってつなぐナレッジコンコースを導入し、生産機能との迅速な連携や情報共有の活性化を図っている。日経ニューオフィス賞、北九州市都市景観賞、日本建築学会 作品選集、日本サインデザイン賞を受賞

 今、同社が力を入れているのは、企業の生産施設や研究施設の拠点再編。その代表的な事例が、安川電機の「安川テクノロジーセンタ」である。安川電機では全国に分散した技術者を福岡県北九州市の本社敷地内に集めるため、当初6階建ての拠点を計画していた。「話を聞いていくと、真の目的は新技術が創発される機会をつくり出したいとのこと。技術者が交流するには、ワークプレイスが細かく分かれていては意味がない。そこで私たちは、敷地面積が制約される要因となっていた埋設管をまたぐ“架構”を考案し、上階に大規模なワンフロアのメガプレートを載せる建屋を提案したのです」と小山社長は明かす。

 ワークプレイスは壁のないフレキシブルなモジュール空間となり、各フロアの中央部には、開発状況やベンチマーク、課題などの情報を見える化したコンコースを設けるなど、部門を超えた偶発的な交流を促進する仕掛けを設定した。まさに技術者間の発想をつなぐ共有空間であり、イノベーション環境を具現化する技術集約拠点となった。