[橘玲の世界投資見聞録]
フィリピン・マニラの”困窮日本人”はいかにして生まれるのか?

2013年4月19日公開(2013年8月6日更新)
橘玲

 以前なら、地元のひとたちはどれほど背伸びをしてもファストフードやファミリーレストランで食事をするのがせいいっぱいで、数少ない高級レストランにいるのは外国人(欧米人か日本人)ばかりだった。だがこの数年の好景気で中産階級が大きく増え、渋滞の列に並ぶのは極彩色のジプニーから日本車やヨーロッパ車の新車に変わった。不動産の価格が高騰し、高層コンドミニアムの建設ラッシュが進んでいるのはアジアの他の都市と同じだ。

 グリーンベルトはアヤラセンターにある庭園を配した高級ショッピングモールだが、平日の昼間に行けば、フィリピン人のビジネスマンやビジネスウーマンが日本円で1人2000円のランチを楽しんでいる姿を目にすることができる。この一角だけなら、銀座や六本木となにも変わらない。

グリーンベルトのレストラン。平日のランチタイム

 もちろん、いまだにフィリピンが貧しいのは確かだ。

 外国人だけでなく、中流以上のフィリピン人家庭でも住み込みのメイドや子守(ヤヤ)を雇うのがふつうだが、その費用はマニラでも月額5000ペソ(約1万円)程度(食事は雇用主負担)。ノイノイ・アキノ大統領が給与明細を公開して話題になったが、彼の月収は手取り6万3000ペソ(約12万6000円)だった。大統領職の報酬がこの金額なのだから、政府高官や警察幹部でも月収はせいぜい8万円程度。ここから住居費や家族の生活費を支払えば、ほとんどなにも残らない。すなわち、賄賂がなければ生きていけない。

 この富の格差があるかぎり、フィリピンの若い女性が日本人の男に近づき、日本の中高年男性がフィリピンに引き寄せられる構図は続くだろう。しかしその一方で、この国が大きく変貌しつつあるのも事実だ。

 そんなフィリピンの光と影を、次回から、マニラで日本人のロングステイヤーの生活支援をするPASCO代表の志賀和民さんが報告してくれます。ご期待ください。

 

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 <執筆・ 橘 玲(たちばな あきら)>

 作家。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)が30万部の大ベストセラーに。著書に『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 究極の資産運用編』『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 至高の銀行・証券編』(以上ダイヤモンド社)などがある。ザイ・オンラインとの共同サイト『橘玲の海外投資の歩き方』にて、お金、投資についての考え方を連載中。

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