企業活動におけるITの比重が高まっている。ITの適用分野は、バックオフィス業務の効率化にとどまらず、ビジネスの高付加価値化や新しいビジネスモデルの創造にも広がっている。しかし、逆にITの運用コストやシステムの柔軟性の欠如が、新しい展開の足かせになっているケースもある。その分岐点はどこにあるのか。

変化に対応できない
今の企業システム

 日本の市場が成熟し、頭打ち感が高まる中で、企業は新しい製品・サービスの開発、M&Aによる事業拡張、イノベーションの実現など、自らが変わっていかなければならない。そこでは常にITの活用も求められるが、現状の企業システムはこうした変化にスムーズに対応できないケースも多く、ITがスピーディな事業展開の足かせとなることもある。「ITはカネばかりかかって効果が見えない」という不満を持つ経営者も多い。

 しかし実は、企業内でITを担当するシステム部門も厳しい状況に直面している。少し前に個人情報保護法や内部統制などへの対応に追われていたかと思えば、現在はグループ化やグローバル化などの新たな課題に直面している。IT部門の負荷は大きくなるばかりだ。しかも、予算は増えずに、人員は削減されている。

 企業のIT戦略アドバイザーとして市場調査やコンサルティングを手掛けるアイ・ティ・アールの代表取締役・内山悟志氏は「IT部門はこの10年、『やることが多い』『予算がない』『人が足りない』という三重苦の状態に置かれています」と現状を指摘する。IT部門が必死に頑張っても対応しきれない状況にあることも理解できる。

図 主要なIT動向の重要度と実施率
出典:ITR「IT投資動向調査2013」
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 こうした経営者側の要求とシステム側の現状のギャップをどう埋めていくのか。その課題解決策の一つとして注目されているのが、基幹システムの全面的な刷新である。「当社が実施したIT投資動向調査でも、IT基盤の統合・再構築が今後の最も重要なITテーマになっています」と内山氏。2012年に統合や再構築を実施している企業は34.7%であり、3年以内に実施予定としている企業を合わせると、実に82.7%にもなる(図)。

 内山氏によれば基幹システム刷新へのアプローチは企業の置かれた状況によって異なるという。「大企業では、古くなったメインフレームのアプリケーションを新しいシステム基盤に移行させるケースやERPシステムの刷新。新興の成長企業では、事業の拡大にシステムが追いつかなくなったことによる基幹システムそのものの整備が主なケースです」。

さまざまな成果をもたらす
基幹システムの刷新

 基幹システム刷新によって期待される成果の第一にあげられるのが、コストの削減である。内山氏は「IT自体が進化しているために、単純にIT基盤を刷新するだけでもコストメリットは出てきます。売上高が数千億円規模の企業で、システムの運用費を年間20億円削減できたというケースもあります」と事例を挙げて解説する。100億円かけても5年間で元がとれ、その後もコストは抑えられる。大きなメリットがあると言えるだろう。