ブランド力を発信し
受験生に多様な選択肢を

 今、日本では大学の数が増え過ぎているという意見をよく聞きます。でも私は決して多いとは思わない。例えば、ある調査によれば、2020年には世界の五つの国(中国、インド、米国、インドネシア、ブラジル)の学生数は合わせて1億人を突破するといわれています。それに比べると、日本の大学生の数が多いという危惧は当てはまらない。それよりもむしろ日本の大学は、「教員の熱意」×「在学生の元気」×「卒業生の活躍」の積のブランド力を各大学が強力に推し進め、発信することで、受験生たちに多様な選択肢を与えるべきだと思います。

 例えば米国の大学は大きく三つのカテゴリーに分かれています。アイビーリーグに代表される名門私立大学、カリフォルニア大学などの州立大学、そしてあまり日本では知られていないのですが、個性のある少人数教育を実現している全寮制のリベラルアーツの小規模大学が全米で600校ほどあります。この大学の卒業生たちは優秀で、アイビーリーグや州立大学の大学院に進むことも多いのです。米国では各カテゴリーの大学が自らブランド力の三要素の強化に努力しています。

 今、日本国内では、地方の小規模大学の疲弊が言われていますが、本来は環境に恵まれた小規模大学こそ、学生と教員の双方向の授業が可能になり、グローバル時代にふさわしい学生たちが育つのではないかと考えています。

 大学のブランド力に必要なのは、ブランドの三要素の内的関連を分析し、積の総量の増大を図っていく戦略です。多様な大学のあり方が広く認められ、大学のブランド力の構図が変わってくれば、日本の大学はもっと活性化し、競争力も上がると考えています。(談)