「やるべきこと」が
きちんとできていない

──長いデフレ経済の中で企業年金に限らず、年金積立金の運用成果は上がらずにきました。

 言うまでもなく年金は掛け金と運用益で維持されますが、運用益は制度の運用利回りから必然的に求められる額が決まってきます。しかしながら1997年に運用が自由化されたのと期を同じくして金利の低下、株安、円高による外国投資の低迷という“三重苦”が始まりました。この状態を十数年も強いられているのですから、運用成果が思わしくないのは、ある意味必然でした。

──タワーズワトソンは、企業年金の資産運用コンサルティング業務で、この間、どのようなアドバイスをしてきたのですか。

 一言で言えば、「やるべきことをきちんとやる」ということです。まず制度によって求められる必要収益と許容できるリスクを明確にします。次に、許容できるリスクの範囲内で必要収益を確保するための運用戦略を策定します。

──基本とするポートフォリオはありますか。

 基本的には二つのポイントで戦略を策定します。一つが、可能な限りの長期投資であること。もう一つが分散投資です。実は、退職給付会計による積み立て不足額のオンバランス化や積み立てルールの厳格化などは、運用の手足を縛る側面があります。短期的に積み立て不足額を減らしたいのならば、リスクの高い投資に向かわざるをえませんが、運用失敗のリスクも高い。可能な限りの長期投資をベースにしつつ1年単位でいかに安定的に運用益を稼いでいくかという大きな絵を描く必要があるのです。

──短期投資はやらないということですね。

 短期的な戦略で長期的に成功し続けることは困難だと考えていますので、やりません。分散投資においても、金融の世界では日々新しい投資対象やより発展した運用手法が出てきていますので、それらが個々のお客様にとってどれだけ適切か吟味しながらアドバイスしています。

アベノミクスで変わること
変わらないこと

──いわゆる〝アベノミクス〟で運用環境はどのように変わると予測していますか。

 長く続いた三重苦で、実は企業年金も相当リスクを減らしてきました。つまり、株式での運用を減らし、債券を中心にした運用体制へと切り替えてきたのです。低金利の下で比較的安定した値動きが続き、着実に運用益を確保してきましたが、今後も低金利が続くのかどうか。債券価格の変動リスクが高まれば、従来のような運用は難しくなります。

 現段階は、今後どうなるかを見極める大きな転換点。しかもヨーロッパでは、今まさに、日本が苦しみ続けた三重苦の状況に陥り運用環境も悪化しています。アベノミクスで変わるかもしれないし、まったく新しい危機が到来するかもしれません。

──そうした事態でも、運用戦略に変化はありませんか。

 こうした環境下だからこそ、企業年金の運営と運用にあたっては、何を優先するのかという順位付けと、回避したいリスクは何なのかという二つを徹底的に検証する必要があります。これがすなわち、冒頭にお話しした企業年金にガバナンスを効かせることになるのです。順位付けと回避したいリスクを担当部署が共通言語で共有した上でポートフォリオを組む必要があります。

──グローバルに展開して豊富な運用ネットワークを持つアドバイザーにも参加してもらう。

 そうですね。世界中の運用会社や運用戦略を調査しているネットワークが、ますます役に立つ状況になってきていると感じます。

【タワーズワトソン】
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