しかし実際に、駆け込みは増えている。駆け込みのピークとなるのは9月末だから、これからおいおい、詳しい市場動向が明らかになるだろう。

 一部には富裕層が、インフレ対策や相続税対策のために都心のマンションなどを購入している動きもある。だから、契約数の伸びが、すべて消費税増税の影響だとは言わないが。

個人の資産に
課税していいのか

 日本経済全体を考えれば、介護や福祉の費用が増大する一方なのだから、将来消費税を上げざるを得ない。問題はそのタイミングだ。デフレ脱却を実現していない今、なのだろうか?

 そしてもう一つ、なかなか議論に上らないのだが、重要な問題がある。果たして住宅取得のような、個人の資産に課税していいものだろうか?

「アメリカやイギリスなど先進国では住宅取得に消費税はかかりませんよ。カナダではかかるけど、還付されます」。そう説明すると、ピックリされることが多い。だが事実、国民の資産については非課税の原則を持つ国や、消費税をかけても軽減税率の対象としている国は多い。

 住宅など資産課税の強化、加えて2015年以降に実施が決まった世界一高い相続税、破滅的な固定資産税など、あたかも私有化を否定したような税制の改正は、皮肉にも政府自民党がマルクス、エンゲルスの信奉者に翻意したかのように見える。

 翻って今、我々はどうだろうか。国の財政を危ぶむだけでなく、国民が真に豊かに暮らすという根幹を問わなくていいものだろうか。そして、自動車産業と並ぶ国の基幹産業である巨大な住宅産業を、衰退させてもよいと思うのか。

 単純に「増税NO」「増税やむなし」と結論を急ぐ前に、基本に立ち返り、一人ひとり真剣に考えてほしいと願っている。

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この記事が収録されている「週刊ダイヤモンド」別冊 2013年10月26日号『新築マンション・戸建て 購入完全ガイド2013年秋』の詳しい内容はこちらからご覧いただけます。

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