再来年の税制改正とともに、相続税の申告や納税を余儀なくされる家族が大幅に増えることが見込まれている。だが、生前からきちんと対策を打っておけば、資産評価額を抑えて納税を回避することも可能だ。その決め手となるのが不動産活用である。

 2015年1月1日に施行される新たな相続税制では、基礎控除額がこれまでの「5000万円+(1000万円×法定相続人の数)」から、「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」に大幅に引き下げられる。

 法定相続人が配偶者と子ども2人(計3人)の場合、従来なら相続財産が8000万円以下であれば基礎控除額に満たないので対象外だったが、改正後は4800万円を超えると相続税の申告や納税が必要になるのだ。

現金を不動産に換えて
評価額を下げる

公認不動産
コンサルティングマスター
相続対策専門士
曽根恵子 夢相続代表取締役
日本初の相続コーディネーターとして1万件以上の相続相談に対処。感情面、経済面に配慮した"オーダーメード相続"を提唱、安心で円満な相続の実現に取り組む。

「首都圏などの大都市圏に住宅を持ち、退職金など、まとまった金額の預貯金がある場合は、基礎控除額を超えて課税対象となる可能性があります」と語るのは、公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士で、テレビや雑誌で相続問題のコメンテーターとしても活躍する曽根恵子氏。

 さらに、相続税の最高税率はこれまでの50%から55%に引き上げられ、税率構造も6段階から8段階へと細かくなる。

 まさに“相続大増税”と呼ぶべき変化であり、「わが家も相続税を納めなければならなくなるのか?」と戦々恐々としている人も多いに違いない。

 しかし、「基礎控除の引き下げや税率の引き上げといった実質的な増税措置が取られる一方で、新税制には、『小規模宅地等の特例』が認められる敷地の限度面積を現行の240平方メートルから330平方メートルに拡大するなど、納税負担を軽くするための配慮も盛り込まれています」と曽根氏は説明する。

「小規模宅地等の特例」とは、亡くなった人(被相続人)の自宅の土地や事業用地について、評価額が80%も減額される特例措置だ。相続人が居住や事業を継続できなくなってしまうことを避けるための配慮だが、1億円の敷地を所有していても、特例が認められれば評価額は2000万円となり、預貯金を合わせても基礎控除を下回る可能性もある。

「こうした特例などを上手に利用して、生前のうちに相続財産の評価額を下げておけば、いざとなってからも相続税で苦しまなくて済むことも多いのです」と曽根氏はアドバイスする。