「アベノミクス」による円安や株高を受け、輸出、消費が伸びるなど、景気に明るさが見えてきている。これまでは、コスト削減で後回しにされてきた企業の設備投資が、本格回復へ向かう期待も高まっている。しかし、オフィス環境への投資は、なおざりにされている場合が多いのではないだろうか。オフィスの環境整備は従業員のモチベーションやモラールを上げることで企業業績に直結するだけでなく、優秀な人材の確保、ブランディングにも不可欠だ。第5の経営資源といわれる「ファシリティ」への戦略的な取り組みが企業の優勝劣敗の鍵を握っている。

 バブル期に建設された建物の多くが基幹設備の老朽化を迎える中、東日本大震災以降はBCP(事業継続計画)への関心も高まっている。このため、営業拠点の統廃合、本社機能の集中などによるオフィスビルの新築・移転、あるいは、受変電設備の更新や自家発電設備の導入のための改修・改装を検討・実施する企業が多い。その業種も広がりを見せている。

 同時に、ノンテリトリアルオフィス(固定席のないオフィス)、ユニバーサルプラン(すべてのデスク等を統一)など、ワークスタイルの変革も含めた機能的なオフィス環境づくりもクローズアップされている。

オフィス環境が他社との
差別化の鍵を握る

 従来、企業の成長を支える経営資源として「ヒト」「モノ」「カネ」に「情報」を加えた4つが挙げられることが多かった。今、第5の経営資源と注目されているのが「ファシリティ」だ。

 ファシリティとは、業務用不動産(土地、建物、構築物、設備等)すべてを指す。従来は「モノ」の一つとして捉えられてきたが、合理的・効率的な資産の活用という「カネ」、優秀な人材の確保という「ヒト」にも直結しているため、経営に対する波及効果が大きい。

 ファシリティを最適な状態(コスト最小、効果最大)に維持するためのファシリティマネジメントは、いまや企業戦略の一つとして重要な位置を占めると考えられている。

 今後は、CM(コンストラクションマネジメント)方式のPM(プロジェクトマネジメント)が求められてくるだろう。

 欧米では広く普及しているCMは、技術面での中立性を保ちつつ、発注者側の立場に立って基本計画や設計、工事発注方式の検討、工程管理やコストマネジメント業務などを請け負うPM手法である。

 経営者の思いが反映され、抱える課題を解決でき、業績の向上へつながるオフィスを実現することは、とりもなおさず従業員にとっても働きやすい環境となる。社員のモチベーションやコラボレーションが向上し、パフォーマンスを最大化することができれば、他社との差別化においても優位なことは自明である。ファシリティマネジメントが、その鍵を握っている。