中小・中堅企業にとって、事業承継は最大の経営課題であるが、昨今は後継者難などにより廃業を決断する経営者が多い。事業承継は、今日、明日で乗り越えられるものではない。10年、そして20年先を見越した取り組みが必要だ。

 日本の中小企業は約430万社あり、全企業数の99.7%を占める。そこには全従業員数の71%に当たる約2800万人が働いている(2009年)。ところが、1996年と比べると、企業数は77万社も減少しているのである。中小・中堅企業の継続性の確保と成長支援は、日本経済の地盤を固めると同時に、地域経済の活性化に不可欠な取り組みといえるだろう。

 しかし今、創業者、2代目経営者たちは、事業承継に取り組むべきかどうかの決断をしかねている。その背景には、事業の将来性についての不安や後継者難など、さまざまな理由がある。事業承継税制の規定が厳しいことから、廃業や事業売却に思いをはせる経営者も増えている。

 中小企業では多くの場合、親族に事業が承継されるため、親族間での相続問題や事業展開をめぐる意見対立の調整が難しいといった問題が生じる。しかし、企業の基本命題がゴーイング・コンサーンである以上、社会の公器としての使命を果たし継続するためには、その担い手が親族とは限らない。つまり、事業承継とは、技術開発や営業政策などと同じ経営の重要なテーマの一つとして取り組まれるべきものなのだ。

 国も、事業承継税制の抜本的な緩和に乗り出し、中小・中堅企業の活力再生に力を注ぎ始めた。13年度税制改正では、重要な改定が実施されている。

 事業承継税制とは、中小企業の後継者が、現経営者から会社株式を承継する際の相続税を80%分、贈与税を100%分軽減する制度だ。新税制では、親族外の後継者を対象とできるようになり、雇用の8割を維持すべきという要件も、「5年間毎年」から「5年間平均」に改正された、現経営者の役員退任要件も「代表者退任」に改められた。つまり、後継者が事業を引き継いでも引き続き現経営陣が役員として経営をサポートし、スムーズな承継を行うことのできる制度が整備されたのだ。

 人が変われば組織も変わる。事業承継は、組織を永続するために避けて通れない、「経営体質の変革」を伴う。それ故、事業承継に優れた支援策を用意しているコンサルティング会社の活用は一考に値する。他者の知恵を使い生かすのも、経営の技であるからだ。