グローバル化が進む中、多くの企業で海外展開は必然となり、もはや英語力はビジネスパーソンにとって身に付けるべき前提条件といえそうだ。インテリジェンスが運営する転職サービス「DODA(デューダ)」では、保有する約20万件の求人情報を基に、企業が求める英語力について調査を行っている。今、企業はどのような英語力を備えた人材を求めているのか、キャリアアップのために英語力は武器になるのか。DODAの木下学編集長に、加速するグローバル人材採用の現状を聞いた。 

木下学氏インテリジェンス
キャリアディビジョン
マーケティング企画統括部
DODA編集長
木下 学

 下のグラフ「英語力を求める求人割合の推移」(図1)を見ていただきたい。初級レベルを求める求人は、2005年では全体のわずか4.2%であったが、11年には58.9%と大幅に増加、以後50%台後半を維持している。上級レベルについても、1.0%から右肩上がりに上昇、20%台後半で推移している。

図1

 08年に急上昇しているのは、リーマンショックの影響を受けて、企業が国内マーケットに限界を感じ、海外展開に本腰を入れ始めた時期に当たっている。

 グラフからも企業のグローバル化に伴って、英語力へのニーズは確実に高まっていることがわかる。

「11年以降、数値が高止まりしているのは、求人のニーズに対して英語力のある求職者が不足しているからです。英語力を求める求人が増えたからといって、英語力のある人材が突然増えるわけではありません。初級、上級共に、英語力のある人材を求める企業側のニーズは、依然として増え続けていると思います」と木下学編集長は分析する。

 かつて英語力を求める求人割合が多かったのは、メーカー(製造業)や商社だった。現在は、外資系企業が多い「メディカル」や、海外企業や外国人の顧客と接する機会が多い「金融」、海外進出や海外企業との業務提携が活発化している「IT」、また海外での販売拠点の展開が増えている「小売・外食」でも、英語力のニーズが高まっている(図2)。

図2

 では実際に、企業はどのレベルの英語力を求めているのだろうか。

「企業側の本音としては、ビジネスでの商談や交渉ができる上級レベルの人材を欲しがっていますが、現実的にそのレベルの人材には限りがあります。そこでベーシックな英語力を備えている人材であればよい、という方針に変えるケースも多くあります。また、英語での実務経験がなくても、資格や検定などで一定のスコアがあれば英語力の素養があると認められるようです。最近は、採用条件として基準点を明記する企業が増えています」(木下編集長)

 海外でのネゴシエーション、つまり商談や交渉ができるレベルの英語力だけではなく、英語でEメールのやりとりができる、英文の資料を読める、電話での簡単なコミュニケーションができるという初級・中級程度の英語力も、きちんと評価されるのである。「ある程度の英語力を持っている方は、定期的に資格や検定などの試験を受けて、自分の英語力を数値化しておくといいと思います」と木下編集長は指摘する。