企業型と個人型、確定拠出年金の使い分け

――確定拠出年金とは、どのようなものでしょうか。

山中 確定拠出年金とは、公的年金制度に上乗せする制度で、加入者が毎月決まった金額を積み立て(確定拠出)し、60歳以降の生活資金(年金)をつくるための仕組みです。税制優遇を受けながら有利に資産形成ができる国の制度で、個人はもちろんですが、特に経営者にとって、社員にメリットを提供しながらコスト削減が実現できる制度として注目されています。

 公的年金の受給開始年齢は原則65歳からですが、確定拠出年金は60歳以降70歳までの間で任意に受け取りが開始でき、またライフスタイルによって、一時払い、年金払いなど受け取り方法を選択することが可能です。

――確定拠出年金には、企業型と個人型の2種類ありますが、どのように使い分けられるのでしょうか。

山中 確定拠出年金の企業型は、労使で合意した金額を社員の給与に上乗せして企業が拠出します。すでに企業年金を導入している企業の毎月の拠出限度額は2万5500円、企業年金がなく確定拠出年金を導入する場合は、毎月の拠出限度額は5万1000円です。

 一方、企業が確定拠出年金を導入していない場合、会社員は任意で制度に加入・拠出する個人型の確定拠出年金制度に加入することができます。こちらは会社員(第2号被保険者)の個人型と呼ばれ、毎月の拠出限度額は2万3000円と定められています。

 さらに自営業など(第1号被保険者)は国民年金の上乗せとして個人型確定拠出年金に加入でき、毎月の拠出限度額は6万8000円となります。

――企業型確定拠出年金の中に「選択制」と呼ばれる仕組みがありますが、どのように使われているのでしょうか。

山中 企業型の確定拠出年金は、企業が一定のルール(社員の勤続年数や役職等級など)に応じて原則全社員を対象に掛け金を拠出しますが、選択制確定拠出年金は、「財形貯蓄」のように社員が任意に掛け金拠出することができます。つまり将来のための拠出を決定するのは社員の「選択に委ねている」ので選択制なのです。

 選択制拠出年金の場合は、企業側は税制優遇のある老後資金づくりの制度を提供するだけで、利用するかどうかは社員の選択次第です。

 社員が給与から拠出した老後資金用の積立金は給与とみなされず社会保険料の対象となりません。結果として、社会保険料の等級が下がり、企業も社員も社会保険料の負担額が共に減少します。ここが選択制の最大のポイントで、企業が給与の上乗せとして拠出する従来の企業型確定拠出年金では、社会保険料の削減は実現しません。

 企業が確定拠出年金の拠出をする場合、拠出用の資金を新しく準備していなくてはなりませんが、選択制の場合、給与として支払う金額以上の資金を準備しなくてもよいので、企業にとっては導入が容易です。

 企業型確定拠出年金を提供する運営管理機関(金融機関)は、導入の条件としてある程度の事業規模を必要としますが、選択制確定拠出年金は、事業規模に関係なく加入できます。また、たとえ加入する人が経営者1人であっても導入できます。