確定拠出年金による
自分年金づくりがもたらす3つのメリット

――確定拠出年金を、自分自身でつくり出す「自分年金」として利用することも可能でしょうか。

山中 可能です。確定拠出年金を生かした「自分年金」には、三つのメリットがあります。一つ目は、掛け金額が全額非課税となるメリットです。例えば、毎月3万円の積み立てで比較すると、手取りから同額を預金するより確定拠出年金で積み立てたほうが、社会保険料、税金の節約で、年間約5万円も得をします(年収600万円、単身世帯の場合。アセット・アドバンテージの試算による)。

 二つ目は、「自分年金」に加入中の運用利益に税金がかからないメリットです。仮に月々3万円を1%で、20年間預金で積み立てた場合の元利合計額は、781万5770円となりますが、確定拠出年金(「自分年金」)で積み立てた場合、元利合計額は796万9713円となり、その差額15万3949円が非課税メリットです。

 三つ目は、60歳で受け取る際に、特別な課税ルールで節税できることです。例えば、加入期間が20年であれば、退職所得控除として800万円を積立元利合計額から差し引いて、さらにその半額までには所得税がかかりませんので、より手取りを多くすることができます(一時払いの場合)。

 確定拠出年金による「自分年金」づくりは、経営者も社員も取り組むことができ、昨今話題のNISA(少額投資非課税制度)よりも税制メリットが大きいので、より多くの方に活用していただきたい制度です。

――企業や個人が制度を細かく理解し、最適な対策を取ることは難しいと思います。こうした点にどのように向き合えばいいのでしょうか。

山中 資産運用を相談できる、信頼できるFP(ファイナンシャル・プランナー)を探すことが大切です。専門家のアドバイスにより不明確な点が解消し、リスクへのさまざまな手だてが打てます。ただ、こうした専門家に相談をする上でも、制度の基本的な理解、お金についての基礎知識を身に付けておくことは重要です。個人としてもマネーリテラシーを高める日々の情報収集をお勧めします。お金に関する制度を知らないと大きな損につながることも少なくありません。まずは、自ら積極的に知ることに努めるべきでしょう。

その他プロの視点1

新横浜アーバン・クリエイト法律事務所 弁護士 田沢 剛 氏
 2012年1月1日からマッチング拠出が実施されるようになりましたが、拠出金額に制約があるという難点があるとしても、老後のために積み立てられるような余裕金がある場合には、節税効果の大きいマッチング拠出を利用するメリットは大きいといえます。確定拠出年金は、自己責任で運用しなければならないものです。預貯金、投資信託、株式などの中から、加入者自身が運用指図を行うため、信頼のできる専門家と相談しながら行ったほうが賢明でしょう。もしも確定拠出年金の運営に関わる運営管理機関や資産管理機関が破たんした場合、固有資産と分別管理されている年金資産は保全され、また、運用商品の提供会社が破たんした場合も、運用商品の種類に応じた加入者保護の仕組みが用意されています。

その他プロの視点2

中小企業経営労務研究所 社会保険労務士 岡本 孝則 氏
 厚生年金は、フルタイムで働く会社員や、一定以上の時間働くパート従業員らが対象となります。法人登録がされている事業所や、5人以上が常時働く個人経営の事業所であるならば、原則として、雇い主は、厚生年金に従業員を加入させる義務を負うものと定められています。
厚生年金の保険料は、雇い主と従業員が半分ずつ負担する仕組みになっているため、例えば、経営状態が厳しい中小企業などが、厚生年金への加入手続きを怠っているケースも以前から指摘されています。厚生労働省によると、厚生年金加入に対する義務違反の可能性のある事業所は、2013年3月末時点で約40万近くになるといわれています。健全な労働環境を維持するためにも、適切な年金環境の整備が求められています。