ステージに立つポールを
見て勇気をもらう

 来日独占ライブでは、少々マニアックな見方もある。ステージでは普通“イヤモニ”と呼ばれるイヤーモニターを耳に入れて演奏するが、ポールは使っていないのだ。「東京ドームは特に音の跳ね返りが強いので、イヤモニがあると楽なんです。1950~60年代の、現在から考えれば設備が整っているとは言いがたい厳しいステージ環境で鍛えられてきた彼の“技”を、ぜひ見てほしい」。

 もう一つの注目点は、演奏中に水を飲まないこと。「一緒に行った吉田美和(DREAMS COME TRUE)が、ライブの途中から『水飲んでないよね』と言い出した。本当に1回も水を飲まずに歌い続けたんです。70歳を超えた人が声もからさず、歌のクオリティを落とさずに。帰り道はもう、その話題ばかりでした。僕らも水はともかく、イヤモニなんかに頼ってちゃいかんと(笑)」

 当初、ライブのあまりの完成度の高さに圧倒されたと言う中村氏だが、やがて「よし自分も頑張ろう」という気持ちがムクムクと湧いてきたという。

「ステージに立つポールの姿を見て、“自分たちも絶対にできる”という思いにさせられました。60歳で定年を迎えるとして、その10年後の年齢のポールが、これだけいい仕事をしている。ビートルズ世代の読者の方も、この番組を見て、ポールから勇気をもらってほしいですね」

 今回の特集は、会場に足を運べなかった人も、音楽の神様の降臨を“体験”できるチャンス。独占ライブ映像をメインディッシュにした至福の12時間を、たっぷり味わいたい。