発電・送電と同時に省エネにも注目すべき

「ドイツは、再生エネの拡大に成功したが、既存火力の廃止が相次ぎ、脱原発政策とも相まって電源不足が懸念されています。既存火力の中でも安価な褐炭の発電所が競争力を持ったために、再生エネは増えたのに、CO2排出量も増えてしまうという皮肉な結果も見られます」

 さらに、電力やエネルギー問題を考える際、ユーザーは発電や創電のほうにばかり目を向けがちとも、竹内氏は指摘する。

「中小企業や家庭では、まだまだ省エネを進める余地があります。例えば、ヒートポンプや熱電併給(コージェネ)といった高効率機器の導入余地はまだある。今ある機器を全部入れ替えるのではなく、一部の古いボイラーは残すなどして併用する”ハイブリッド型”でもよいのです。高効率機器をベースに、既存の機器はピーク時に使うなどの運用を行えば、ベストミックスを自ら作ることも可能でしょう」

 省エネ法も改正され、今後はオフィスや住宅などでエネルギー消費量や断熱性について、より高い関心が向けられるようになっていく。需要者の側で、電力消費のピークを抑制するような動きが一層広まり、それを可能にしてくれる機器やサービスへの注目が集まっていくはずだ。

「固定価格買取制度は再生エネ導入の起爆剤にはなりました。しかし、ユーザー負担を見通せない、技術開発を促進しないという欠点がある。目立たない存在でしたが、グリーン投資減税(取得価格の30%特別償却などの税制優遇が受けられる制度)など再生エネ普及策を冷静に評価し、海外事例等も参考に、見直すべき点は修正したほうがいい」

 再生エネに対して健全な投資が行われるよう、金融・税制面も含めた規制緩和が行われる必要があるだろう。

かかりつけ医のようにエネルギーの使い方を提案

 エネルギーは必要な時に必要な量が確保できなければ意味がない。発電や創エネに適した資源が身近にどれだけあるかも地域によって異なる。

「地域の身近な『かかりつけ医』のような存在として、エネルギーの創り方、使い方を提案してくれる事業者が求められるのかもしれません。創エネ+省エネの観点から、機器のリースなども含め、地域やビル、個々の住宅にとって最適な使い方を提案するのです」

 これまで、既存の電力会社間に競争はなかったと言っていい。しかし、小売りの自由化やそれに続く発送電の分離が現実となった時、様相は変わってくる。

「ユーザーが自由になるのはもちろん、事業者も自由になるのです。選択肢が増えるのか、逆に寡占が進むかはわかりませんが、需要家も意識を変えてプロシューマー化することが求められるでしょう」

 電気やエネルギーを当たり前のものとしてではなく、自身の価値観で選択し、使う時代が身近に迫ってきている。