メタノールはガソリンより安価な上、価格が安定していて日本国中で入手しやすい。しかも、取り扱いも簡単だ。そのメタノールを燃料に、発電できる電池がある。バックアップ用や系統電源が整備されていない山間部、海上、離島等での活用が期待される。
豊田通商では「地球課題」の解決に向けて、電池関連事業にも注力してきた。今回、同社が新たに注目し、日本国内での導入販売を進めているのが「直接メタノール燃料電池」だ。
2005年に米国で創立されたオージャ・プロトニクス社が開発した「オージャ・パック」という製品で、イザという時のバックアップ電源として、さらには離島や僻地などの系統電源がない環境で威力を発揮する。
取り扱いが容易で低コスト、可般性に富む
水野誉志
アルコールの一種であるメタノールは現在、国内では全量を海外から輸入しているが、用途としては、化学品生産過程の製品洗浄などに用いられており、日本でも広く流通している。「オージャ・パック」は、このメタノールを燃料として発電を行うものだ。
「メタノールの濃度が60%以上になると消防法の危険物扱いになるのですが、オージャ・パックは50%のメタノール水溶液で発電できる設計のため、取り扱いが簡単なことが最大の特徴です」(営業開発部新事業グループ・水野誉志氏)
国内で広く流通しているメタノールを燃料にするため、入手が容易な上、濃度が60%未満であれば、取り扱いのために有資格者を用意する必要もない。
同社が考える用途の一つが非常用バックアップ電源である。
「病院やデータセンター、携帯電話基地局や市町村役場、災害時の避難所など。これらの場所で災害などによる停電が起きた時、最低限の電気を確保する手段になると考えています」
さらに、そもそも系統電源が存在しない場所でも、オージャ・パックの活用が可能だ。
「『燃料電池』という名称ですが、イメージとしてはメタノールを用いた、環境にやさしいクリーンな発電機と思ってもらえればいいと思います。オージャ・パックは燃料さえあれば、どこでも発電が可能であり、メタノール水溶液は常温常圧で保存できるため高圧の燃料タンクを用意する必要もなく、初期投資を低く抑え、どこでも簡単に導入することが可能です」
さらに、持ち運びができるオージャ・パックは、離島や山間部、茶畑、道路工事の現場などで、電気を供給してくれる。
同社では今後、保冷車の荷台の電源、携帯電話基地局のバックアップ電源など、新たな用途を積極的に提案していく考えだ。日本のユーザーにとっては新しい選択肢となり、「メタノール燃料電池」の普及が加速すると思われる。
■関連記事はこちら
https://diamond.jp/articles/-/54752