婚礼アルバム事業の成功
同社が創業したのは1989年。最初はレンタルドレスとエステサロンを経営していたが、95年の阪神・淡路大震災で壊滅的な被害を受ける。その後、再起を懸けて立ち上げたのが、婚礼用デザインアルバム制作事業「ラヴィ・ファクトリー」だ。新郎新婦にカメラマンが密着し、ドキュメンタリー風に撮影してアルバムに仕上げるというこの新サービスは爆発的にヒット。新郎新婦の自然な表情を捉えたドラマチックなアルバムは、型通りのポーズを撮影するのが当たり前だった婚礼写真の常識を大きく塗り替えた。
神戸のような一地方都市から、業界の常識を変えることができた――。この成功体験は高橋氏に大きな力を与えた。このときに得た「消費者の本音を捉えたサービスは絶対に受け入れられる」という信念が「小さな結婚式」の成功へとつながっていくのだ。
ちなみにラヴィ・ファクトリー事業は現在では海外にも進出しており、ハワイで年間6000~7000件のフォトウエディングを受注しているほか、アジア各地から日本へのフォトツアーも好調だ。
丁寧な対応で思いを形に
ラヴィ・ファクトリー事業は立ち上げから20年、小さな結婚式は15年。この間、競合がどんどん増える中で、同社が長く顧客に支持されてきたのは、低価格でも丁寧な対応を崩さず、高い顧客満足を得てきたからこそである。
「無宗教の人前式ですし、写真、ヘアメーク、ドレスなどを全て内製化していることは、低価格・高品質を実現するための大きな要素です」
格安ながらドレスは2000着から選ぶことができ、マタニティドレスも豊富にそろえる。「子どもと一緒に」「ペットと一緒に」「二人きりで挙げたい」といった要望にも応え、式場の空きさえあれば準備期間1週間でもOKというスピーディかつフレキシブルな対応は、外部に投げない体制でしか実現しなかったものだろう。しかしそうした対応を実現しているのは、「思い」だと高橋社長は言う。
「『小さな結婚式』も『ラヴィ・ファクトリー』も薄利多売のサービスですが、低価格だけが売りのデフレ商品ではありません。私たちは『結婚の選択の幅を広げる』という社会的使命にいち早く取り組んできたことにプライドを持っていますし、目の前のお客さまの幸せを本気で願っています。それこそが顧客満足につながっていると思います」
社員の能力を最大限に生かすため、権限委譲にも積極的だ。分社長制度を敷き、事業部トップのCOOには人事権も事業執行権も渡す。同時に高橋氏は経営トップとして理念の共有に力を注ぐ。四半期ごとの総会では全社員を前に経営理念を丁寧に語るほか、リーマンショック後の業績不振を機に、店長クラスが一堂に会するマネジメント研修も始めた。
28歳で起業した直後から「100億円企業を目指す」と公言してきた高橋氏。一貫して事業の拡大を目指す理由は明快だ。
「より多くの人の役に立ちたいからです。お客さまが増え、取引企業が増え、社員が増え……。規模が大きくなればなるほど、社会的な役割も広がります」
そして13年度、その宣言通り、同社の売上高はいよいよ100億円を突破する見通しだ。
社員の意欲と能力を最大限に引き出していること、地域・社会との関わりを大切にしていること、そして、顧客に対して高付加価値・差別化サービスを提供していること。この3点において秀でた経営をしている企業として、経済産業省が選出する「平成25年度おもてなし経営企業」にも選ばれた。
「300億円企業」という新たな目標に向かって、同社は既に走り出している。
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