何事も初期開発は、試行錯誤の連続だ。行ったり来たりが発生する。このすり合わせの頻度の多さや複雑さが、他社にマネされない技術やビジネスモデルを生み出す。これを異なる企業間にて成立させることは、なかなか難儀である。いくら強固なパートナーシップを取り交わしても、企業が異なれば、これまでとは違う仕様書や指示書をベースにしてやり取りをする必要が出て来る。残念ながら、現代は契約社会だ。

 アップルのハードの使い勝手の良さは、ユーザーインターフェース設計とハード上で動くアプリケーション設計との密なるすり合わせにポイントがある。アプリケーション開発の中にユーザーインターフェース設計が組み込まれていると言った方が、正しいかもしれない。互いの開発が独立していない点が、使い勝手の良さを生む。

キモは「価値の交差点」のすり合わせ
市場創出型企業の成長性は放棄される?

 これを、iPod + iTunesで考えるとわかりやすい。アーティストの検索、曲の検索、そしてダウンロードと再生などは、iPod側のスクロールホイールとも密接にかかわっており、iTunesの操作とiPodの操作は同時に決められて行く。

 それが今後、「業務用アプリの担当がIBM」「ハードはアップル」と切り分けられるとしたら、その交点となる操作性はどうなるだろうか。iPod + iTunesのように両社が密に連携し、妥協せずに、わずかな操作性の向上にも執念を燃やしてくれれば嬉しいが、それを期待することは野暮な気もする。

 というのも、SAPなどを思い浮かべればわかりやすいが、業務系のアプリケーションでは、概してユーザーの操作性が置き去りにされる傾向が強いからだ。B2BとB2Cは、そもそもアプリケーション開発における優先度が異なるのだ。

 そうした結果、「最近のiPad、使い勝手悪くない?」とアップルフリークには聞きたくもない噂が、ユーザー間で飛び交うようになるかもしれない。

 ただし、アップルはそもそもそこまでの密なる連携は考えておらず、通り一遍のソリューションレベルしか想定していないかもしれない。互いの強みで互いの弱点を補完し合う程度であり、「価値の交差点」の創出までは考えていないのかもしれない。このことを念頭に置いておく必要はあるだろう。

次のページ

ジョブスと違い、「普通」になる道を選んだクックの戦略

TOP