企業から評価を受ける
鍛えられた実践的人材

 教育界を見てきた松本氏は、専門学校が就職に有利な理由は大きく2点あると言う。

 第一に、採用する企業側からすれば、専門学校生は卒業時点で、その職業に関する実践的な知識と技術、コミュニケーション能力がすでに備わっている点だ。そのため、新人研修などが不要というメリットがある。

 もう一つは、企業と学生のミスマッチが少ない点。専門学校では、早いところは1年次からインターンシップを通じて企業での実務を経験する。学生側も卒業後の就職先が具体的にイメージできるため、就職した後、すぐに離職するようなケースが少ない。これにより、「次回の採用も専門学校から」という好循環が生まれるのだ。

「インターンシップは、学生が企業側に顔と名前と“実力”を売り込む絶好のチャンスでもあります。大学生から見れば、実にうらやましい話でしょう」

職業に直結する内容に
ますます磨きをかける

出典:文部科学省「2014年度 学校基本調査」
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 就職先も幅広い。医師や教師など、大卒でなければ就けない職業以外は、すべての業種で専門学校出身者が活躍する時代だ。特に医療、福祉分野は、市場が拡大し続けており、常に売り手市場となっている。建築・設計分野も、仕事に対する意欲や熱意があると、高い評価を得ているという。

 専門学校の弱点は、社会からの低いイメージと、学校による教育内容のバラツキだった。

 大学の場合は、文科省から助成金を受ける代わりに教育内容の評価を受けることが義務付けられている。専門学校の場合、資格に直結する学科は、ある程度カリキュラムが規定されるが、それ以外では授業内容も卒業要件も各学校まちまちだった。

 しかし、文科省が今年度から始めた、最新の実務知識や技能を磨き、実践的な職業教育に取り組む学科を認定する「職業実践専門課程制度」により、様相が一変した。

 認定を受けるには、カリキュラムの編成時から企業と密接に連携し、授業でも企業人を招いての講義や実習が必要となる。さらに、教員に対する実務研修や運営内容の評価・公表の義務化など、透明性も求められる。

 初年度、全国約3000の専門学校のうち、472校、1373学科が認定を受けているが、申請は教育内容に対する各校の自信の表れとの見方もある。

「この制度を申請していることは学校選びの上で参考になると言えるでしょう。ただし、取得していないところでも、特殊な分野で実績のある学校の場合は、カリキュラムの自由度を優先し申請しないところもあります」

 いずれにしても、新制度の導入で専門学校間の競争激化は避けられない。しかし、それが結果として、専門学校の魅力を増すことになるのは確かだ。