将来、家計が一つになる婚約者の財布に手を忍ばせる──。かつて銀行再編の現場で起きていたことが、今も繰り返されていた。

“婚約者”同士で顧客争奪戦 <br />都内地銀再編の前途多難関東財務局長から持ち株会社の設立認可書を受け取る、東京都民銀行の柿﨑昭裕頭取(左手前)と、八千代銀行の酒井勲取締役(左奥)
Photo by Takahisa Suzuki

 10月1日、新たな銀行持ち株会社、東京TYフィナンシャルグループ(FG)が発足した。東京都に地盤を持つ、東京都民銀行と八千代銀行が共同で設立し、その傘下に2行がぶら下がる形式をとる。

 会長には八千代銀の酒井勲取締役、社長には都民銀の柿﨑昭裕頭取が就任した。2行合計で融資量は3.2兆円となり、預金量では4.4兆円で、首都圏の地方銀行・第二地銀では6位、全国では20位程度の規模になる。

「経営統合などを経営課題として考えてほしい」。今年1月、全国の地銀頭取たちを前に、畑中龍太郎・金融庁長官(当時)は、そう呼び掛けた。会合という公の場での踏み込んだ発言を機に、地銀界で一気に再編機運が高まった経緯がある。そうなってから初めての再編案件とあり、地銀再編の核となるか、はたまた呼び水となるかと周囲の注目を集めている。

 2行は、強みの融合による収益力向上と、店舗や業務の一本化などによる経営効率化をうたう。