空き家をうまく
転用していく知恵

 次に「空き家解消」だが、2013年の調査では全国に空き家が約820万戸もある。

 空き家が増えると老朽家屋の倒壊リスクが増し、地震などの災害時に退路をふさぐ危険性も高まる。放火など犯罪の温床にもなる。人口減少で、今後も空き家は増加の一途をたどると見られ、国や地方自治体は「不要な空き家を除却してコンパクトシティ化を図る」方向へと進みつつある。

 なぜ、多くの人が「住まない家屋」をそのまま放置するのか。壊して更地にする資金がない場合に加え、主要な動機は「節税」である。「小規模宅地等の特例」という制度を使えば、200平方メートルまでの宅地は固定資産税評価額が6分の1になる。更地にすれば一気に固定資産税が100%に戻るわけで、これを「避けたい」と考える人が多いのだ。

 税制改正要望では、不要な空き家の除却に向けて「土地に係る固定資産税について必要な措置を講ずる」としている。私は旧東ドイツの空き家対策が大いに参考になると思っている。

 東西ドイツ統一後、旧東ドイツの市街地では大量の空き家が発生した。そこで、ライプツィヒ市では空き家の除却に補助金を出すとともに、その土地を公共の用途に転用した場合、10年間は固定資産税を免除する税制を打ち出した。

 ポイントはここで、空き家を「取り締まる」発想ではなく、スマートな手法で転用させるために税制を活用するのである。日本も将来に向け、後顧の憂いを残さないために、今こそ手を打つべき時だ。