世界150ヵ国以上にKPMGグループのネットワークを持つKPMGジャパンは、監査と税務、アドバイザリーの3分野にわたって、日本企業のグローバル経営をサポートしている。中でも近年、同グループが注力するのがM&Aの活用だ。M&Aを成功に導くため、どのような取り組み、ノウハウの提供をしているのだろうか。
今や、企業が不断の成長を目指す上で、M&Aは欠かせない。グローバル展開するKPMGが取り扱うM&Aは多岐に及ぶが、昨今、目立つのが日本企業が海外企業を買収する「In・Out」案件だ。
先に器ありき
戦略あってこそのM&A
中尾哲也
「当グループは、M&Aの川上から川下までワンストップで迅速なサポートをすることで、M&Aの成功確率を高めてきました。M&Aは時間の短縮や費用対効果の最大化を図る有効な手段の一つだと思います」(中尾哲也パートナー)
成長の手段としてのM&A戦略の策定、具体的な対象企業の選定(プレ・ディール)、投資判断、交渉、締結(イン・ディール)、買収後の運営、価値の創出(ポスト・ディール)と、M&Aにはさまざまなプロセスがあり、それぞれの段階で求められるスキルや経験は多方面に及んでいる(下図参照)。
これらの全プロセスで一貫してサポートできることが、情報の共有、問題点の発見、多面的なチェック、費用や時間の軽減といった効果をもたらす。
とはいえ、他人任せだけではM&Aの成功は覚束ない。成長のバックボーンとなる経営・事業戦略がまず明確にあり、あくまでその手段としてM&Aを活用するということを事業者は認識しなければならない。
「事業、機能、エリア(海外を含む)を中心に、税務・法務・IT等も加味して、事業ポートフォリオを定期的に見直す作業が必要です。そうすることで初めて、指針とすべき『道標』が見えてきます」(眞野薫マネージングディレクター)
道標に基づき具体的な
投資判断をする
眞野 薫
この「道標」が見えていることで、M&A対象企業の選定段階に入ったときに、スピーディな判断ができる。
「M&Aは、プロセスの一つひとつにスピードが求められます。日本企業は、この判断に時間がかかることが多い。一つの判断の遅れが、それまでM&Aに費やしたコストを無駄にすることになりかねません。それ故、その前提となるM&A戦略(プレ・ディール)、さらにその前提となる経営戦略、事業ポートフォリオ等の策定を通じて判断基準(道標)を明確にしておくことが重要なのです」(眞野氏)
海外企業の買収判断にあたっては、いうまでもなく価値に見合った買収価格を設定しなければならない。現地の税務・法務や物流、さらには商習慣といった点に留意し、その上で、どの機能は現地(またはシンガポールなどの第三国)に集約し、他の分野は日本国内で管理するといった判断まで求められる。