日本のGDPの7割を占めるとも言われるサービス産業、サービス業だが、かなり以前から生産性の低さが指摘されており、なかなか改善されないままでいる。その原因の一つとして考えられるのが「サービス原価」に対する認識の甘さだ。

 サービス原価と言われてもピンとこないかもしれない。会計上、サービス業の売上原価は外注費ということになるが、それでは経営の実態は見えてこない。わかりやすい例として、ソフトウエア開発企業を考えてみよう。外注せず、社内の人員だけでまかなっている場合、原価の大半は人件費だ。

 ここで問題が出てくる。ソフトウエア開発に限らないが、一人の社員が一つだけの案件を担当していることは通常あまりなく、複数の案件を抱えている。各案件にかけた手間や時間に応じて、それぞれの利益も当然変化してくるはずだが、そこまで厳密に原価管理を行っている企業はどれだけあるだろうか。

 例えば、会社にとっての重要なプロジェクトがあり、エース級の人材を集めて開発を行ったとする。無事納品までこぎ着け、それに見合った売り上げを得られたとしても、その利益をどのように評価しているだろうか。エース級人材の一人は、重要プロジェクトにかかりっきりだったのに、原価(=人件費)が均等に按分されて、他案件は赤字になってしまった、というような事態は発生していないだろうか。

 このようなサービスの原価・原資に着目した「サービスリソースプランニング(SRP)」という考え方が登場してきている。従来の基幹システムだけでは捕捉しきれなかった、人員配置やプロジェクト管理の情報を加味して、サービス業の全体最適を目指すものだ。

 市場の縮小、労働者の減少が指摘される日本において、サービス業の生産性向上は喫緊の課題。そうした中で、国内でもSRPの実現に向けて取り組みを始めている企業もある。マーケティングサービス企業CDGはその1社だ。東京・大阪を中心に海外にも拠点を置き、21業種2000社の顧客に対して、販促プロモーションの企画・運営をはじめさまざまなマーケティングソリューションを提供している。

 同社では、それまで別個に存在していた基幹系システムと情報系システムを統合。従来、両システムを横断するような分析は約1週間かかっていたが、それが瞬時に行えるようになった。会議などでも、個人の思いつき・感想程度にすぎなかったものが、数値ですぐ裏付けがとれるようになり、より正確な経営判断に結びついているという。会議時間の短縮という副次的効果も生まれた。

 昨今、製造業でも、製品をサービスの付加価値と合わせて提供する「サービタイゼーション」の流れが生まれてきている。製品の販売であれば納品で完結するが、サービスの提供となると考慮すべき期間が長くなり、そのリソースの管理にも新たな視点が求められる。そういった観点からも、SRPの考え方は今後重要になってくるにちがいない。

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