ビジネス環境が激しく変化している中、月次や週次のデータに頼っていたのでは変化に取り残されてしまう。現在求められているのは、日々の意思決定を担う経営者や業務ユーザーが、必要なデータを必要なときに入手できるような仕組みである。高度なデータ分析に取りかかる前に、まずは社内に存在するデータをタイムリーに入手できるような環境構築を目指すべきだろう。
日々の意思決定に必要な
データを入手するには
企業にとって、増え続けるデータをいかに活用するかは切実な課題である。
最近では、膨大なビッグデータの中から知見を引き出す専門職、データサイエンティストの重要性なども指摘されている。だが、専門家を採用・育成できるのは一定規模以上の企業に限られるだろう。中堅中小企業の経営者からは、「ビッグデータは大企業の話で、ウチには関係ない」といった声も聞こえてくる。
しかし、いきなり高いハードルを設定する必要はない。社内には重要なデータが存在しているのに、それを経営者や業務部門が見たいときに見られない、使いたいときに使えないという現状に悩んでいる企業は多いはずだ。まずは、こうした課題への対応が第一歩だろう。ビジネス活動の現状を素早く、タイムリーに把握できなければ、変化の波に飲み込まれるばかりだ。
では、社内の重要データとは何か。その代表例が販売や在庫などの現状を示す基幹データである。多くの企業はこうしたデータを扱う基幹システムを運用しているが、可視化の仕組みが不十分というケースも多い。例えば、本当は毎日必要なデータが、週次や月次でしか見られないといった課題がある。こうした状態を見直し、経営者や業務ユーザーが欲しいデータを見たいときに見られる仕組みを構築するのである。
実際、こうした取り組みを意思決定のスピードアップ、業務効率の向上などにつなげた事例も少なくない。
福岡市の原土井病院はレポーティングツールを用いて院内のシステムと連携させ、空病床の状況、病床が空くタイミングなどを病院スタッフがリアルタイムで把握できる院内ポータルを構築。スタッフに対して常に最新の情報を提供することで、病床の効率的な割り当てなどの効果を実現している。
半導体や電子部品などを扱う独立系商社、富士エレクトロニクスはレポーティングツールを導入して、データベースに格納されている基幹データを参照できる環境を整え大きな成果を上げている。
求められているのは経営や日々の業務を担う人たちが正確なデータにアクセスし、それを意思決定に生かせるような情報環境である。それは企業の業績に直結する課題だ。ビジネス環境の変化が加速する時代、「いま」を知ることの重要性はますます高まっている。
記事で紹介した二つの実例の
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