国交省が推進する
情報化施工が一般化

建設ITジャーナリスト
家入龍太氏
いえいり りょうた 建設業が抱える 経営課題を解決するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。1982年京都大学工学部土木工学科卒業後、米ジョージア工科大学大学院工学修士課程修了、京都大学大学院修士課程修了(土木工学専攻)。日本鋼管(現JFEエンジニアリング)、日経BP社の「日経コンストラクション」副編集長、「ケンプラッツ」編集長などを経て、2010年イエイリ・ラボを設立。

 国内の仕事は十分にある。故に建設業界は人材不足が深刻化している。熟練工は高齢化し、少子化により若手の数は減っている。建機を操作するオペレーターの育成だって一朝一夕にはできない。

 そこで国土交通省が推進しているのが「情報化施工」である。これはICT(情報通信技術)を活用した新たな施工方法で、建設事業の調査→設計→施工→維持管理という一連のプロセスの中で、ICT化が遅れていた施工プロセスを改善することで高効率・高精度な施工を実現しようというもの。

 省人化や生産性の向上により人材不足を解消し、コスト削減効果も期待されている。GNSS(GPS)やトータルステーションなどから得られる位置情報に基づいて正確に制御されたICT建機が3次元図面のデータに従って工事を進めていくため、所定の訓練を受ければ新人オペレーターであっても操作ができる。

 また作業対象エリアの目印となる丁張りやトンボなどの目安くいや作業の合間に行う検測が不要になるため現場の施工時間が短縮されて安全性も高まる。

 国交省は08年に「情報化施工推進戦略」を示して普及に努め、13年には情報化施工の一部を「一般化」した。その結果、情報化施工の活用件数は08年の75件から13年の1114件へ約15倍に増えている。「数万件という公共工事全体の数から見ればまだわずかですが、普及は予想以上に進んでいます。最近では地方の比較的小規模な建設会社も情報化施工を取り入れています」と家入氏は解説する。

将来は完全無人現場が
出現する

 国交省の調査では情報化施工の取り組みに前向きな企業が約8割ある一方で、取り組む予定がないとする企業も約2割存在するという。その最大のネックは初期費用の高さである。家入氏が入手したある工事の資料には「機器のレンタル費用が通常の工事の5倍程度掛かる」ことが示されている。「しかし工事が進行するにつれて施工日数の短縮や人件費の抑制などの効果で差が縮まり、途中で逆転。最終的には情報化施工の方がコストが抑えられたのです」。この事実が認識されれば、普及は一気に進むだろう。

 情報化施工の先にあるのが無人化施工である。自動車の自動運転が実用化に向けて研究されているように、そう遠くない将来、工事現場も完全無人化施工が実現すると家入氏は予想する。

 「安全性や近隣への騒音問題などが解決されれば、無人のICT建機が動く現場が出現するでしょう」。ICT建機が、新しい時代の建設現場を創り出すに違いない。