全世界で30万人以上の社員を擁する総合コンサルティングファーム、アクセンチュア。クライアントのハイパフォーマンスの実現を標ぼうするが、それを支えているのは、キャリアダイバーシティの下で個性豊かな人材の力を最大限に引き出す「人財」養成力だ。異彩を放つ「人財」を輩出する秘密は一体どこにあるのか。

 グローバル化とデジタル化。いまや企業経営の重要なキーワードだ。新興国の台頭などによりグローバル市場は多極的で混沌とした状況になっている。そしてデジタルテクノロジーの発展や普及によって、これまでの産業が破壊されつつあり、長期的に競争優位を築くことは難しくなっている。

 こうした時代でも価値を創造し続けられるのは、変化をスピーディに見極め、柔軟に対応し、自ら進化させていくことのできる組織や人であろう。そして、そのためには国籍、性別などにかかわらず多様な人材が自らの持つ専門性を最大限発揮できる「ダイバーシティ」を実現していくことが必須である。

 そんな方向を目指す企業は少なくないが、実現は簡単なことではない。確固とした企業理念やコアバリューを組織の指針として持ち、世界レベルで浸透させていく必要がある。

 大きなチャレンジだが、不確実性の高いグローバル&デジタル時代においては欠かせないことだ。その好例をアクセンチュアに見ることができる。

価値創出のために
成長した異能集団

 アクセンチュアは世界最大規模の総合コンサルティングファームである。世界全体の従業員数は30万人強、国内だけでも約5400人に達する。事業の大きな柱は戦略、デジタル、テクノロジーコンサルティングおよびアウトソーシングサービス。それぞれの分野で、業界や経営テクノロジーなどに関する専門性を持つプロフェッショナルたちが切磋琢磨し、顧客企業に対して高い価値を提供している。

アクセンチュア 代表取締役社長 程 近智(ほど・ちかとも)
1960年生まれ。米スタンフォード大学工学部卒業後、1982年アクセンチュアに入社。1991年コロンビア大学経営大学院でMBAを取得。戦略グループ統括パートナー、通信・ハイテク本部統括本部長などを経て2005年代表取締役に就任。2006年に代表取締役社長に就任。早稲田大学客員教授、経済同友会幹事なども務める。

 コンサルティングファームというと、企業の外部アドバイザーというイメージが強いかもしれない。だが、アクセンチュアは、それだけではない。アクセンチュア社長の程近智氏は次のように説明する。

 「アクセンチュアは単なるアドバイザーではなく、ビジネスパートナーとしてクライアントと価値を共有する存在に進化したと自負しています。結果をビジネス価値としてクライアントに提供し、自身の成長にもつなげていくビジネスモデルです」

 ビジネスパートナーとして高い評価を受けるためには、優れた人材の集積が不可欠。しかも、クライアント企業には珍しいタイプの、とがった個性や専門性が求められる場合も多い。こうして、アクセンチュアはユニークな強みを持つプロフェッショナルたちの“異能集団”として成長してきた。

 2013年度の実績で、アクセンチュアは人材トレーニングに8億7000万ドル以上を投資している。専門性の切れ味をよりシャープに磨くため、個性の花開く土壌をより豊かなものにするためである。