前出のC氏は言葉の問題を重視する。

 「欧米には英語が話せる人材を送り込んでも、中国へはまったく言葉のできない駐在員を行かせます。本社は現地に送り込んだ人材を即戦力だとみなしているから、すぐに業績が上がるものだと思っている。しかし、中国語ができなければ、情報すら吸い上げられない。社員の不正だって見抜けませんよ」

 赴任地の言葉に堪能な人材は、よほどの企業でなければ確保されてはいないし、現地経営においての必須条件ではないだろう。だが、中国では現地通訳への依存度があまりに高いと、足元をすくわれる。交渉相手との間に入る通訳が、先方の提示金額を上乗せして伝え、ちゃっかり中抜きするパターンはあまりにも常套だ。中国人通訳による誤訳も油断ならない。筆者もまた、トップが「日本語オンリー」であるが故に、中国人秘書や通訳にオフィスを牛耳られていく過程を複数、目の当たりにしてきている。

 同時に透けて見えるのが、人材の欠如だ。

 「日本企業の中には、日本より海外子会社の業績がいいところもある。うちは特にアジア、それも中国がいい。本社そのものは利益を出せないが、海外の配当に本社が頼る、そんな時代になってしまった。けれども最大の問題は、海外法人を経営できる人材が枯渇しているということです」

 こうコメントするE氏は本社で元国際事業部長として活躍。「現地の文化や商習慣の違いを理解せずして、経営などできるわけがない」を持論に、「事前研修あってのグローバル化」を唱えて続けて来た。

 「近年は、大企業はどこの現地経営にエース級を出すようになった。けれども、本社には『国内のエース=海外のエース』という勘違いがある。いまだ現地で同じトラブルが続くのは、海外で通用しないエース級だから。だからこそ、派遣前の啓蒙ありきなんです」

総経理たちも2代目に代替わり
進出当初の熱意は失われた

 さかのぼること8年前、ようやく上海経済の萌芽を迎える90年代終盤は製造業の進出が多く、初代総経理による熱血経営が見られた時期だった。それこそ、グローバル化などは緒に就いたばかり、誰もが「習うより慣れろ」という状況下だった。

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