すし、うどん、カレー、カツ…。そんな日本の国民的グルメが、マレーシアで不思議な変化を遂げている。日本人から見ると、日本食とはいえないようなアレンジが加えられているが、地元市民が歓迎するのは、むしろ「なんちゃって日本食」だ。「え~?」と青ざめるような食を求めて、首都・クアラルンプールを歩いてみた。(ジャーナリスト 姫田小夏)
「タコヤキズシ」って何?異色のすしネタが人気に
マレーシアの首都・クアラルンプールは、あらゆる国や地域の食が集まる街だ。
マレー料理やインド料理はもちろん、中国から渡ってきた末裔が伝える福建、海南、客家、潮州などの郷土料理もある。ポケットに50マレーシアリンギット(1MR=約30円)ほどあれば、さまざまな地域の「うまいもの」が1日3食堪能できるB級グルメ天国だ。言い換えれば、クアラルンプールはローカルフードの激戦区でもある。
その激戦区で近年注目されつつあるのが、すし、うどん、カレー、カツなどの日本食。しかし、メニューをよく見ると「なんだこれは!?」と、がくぜんとするものが少なくない。
例えば、地元の人が見よう見まねで作ったと思われる「カツとうどん」「カツとラーメン」の組み合わせである。カツを「とんかつ網」に並べたところまでは正しいが、それが架かるのはなんとラーメンのどんぶり(下の画像参照)だ。うどんにいたっては、てんぷらのようにカツがだし汁に浸されている。それらは「チキンカツラーメン」、「チキンカツウドン」(それぞれ12MR、約360円)と名付けられ、ホーカー(屋台街)の看板メニューになっていた。
また、すしも独特の変化を遂げている。常に地元の人々で満席になる回転ずし店では、意外なネタが人気だった。「クリスピー・カニフライ」「カニマヨ焼き」など、「いなりずし」のトッピングをさまざまにアレンジしたものだ。江戸前ずしをベースにした日本の回転ずしとはだいぶ雰囲気が違う。
いなりずしのトッピングにたこ焼きを盛り付けるケースさえあった。モノレールのチョウキット駅に近いあるショッピングモールでは、「タコヤキズシ」が1個2.2MR(約66円)で売られており、帰宅途中のムスリムの女性たちがうれしそうに買っていた。