国内で385万社に達する中小企業。その最も重要な課題の1つが事業承継だ。特に、高度成長期に創業した企業が代替わりの時期を迎えている中で、より切実なニーズとして浮上している。

 企業のニーズ1つ1つに向き合い、成長を加速しているのが日本M&Aセンターだ。2009年度に37億円だった売上高は、13年度に100億円を突破した。 この急成長を支えているのが、顧客情報を重視する姿勢。同社の三宅卓社長は、社内で常々「私たちにとっての顧客情報は、銀行にとっての現金と同じ」と語る。

営業先情報の未入力は“横領”に近い行為

三宅社長の写真株式会社日本M&Aセンター
三宅 卓 代表取締役社長

1991年の創業以来、中堅・中小企業のM&A実務の草分け的存在として、分林保弘会長とともに日本M&Aセンターを牽引。さらなるM&Aの品質向上と効率化を目指して、Salesforce導入を決断した。

「営業先で得た情報を、その日のうちにデータベースに入力せずに帰宅してしまったら、それは銀行員が集めた現金を家に持ち帰るのと同じこと。そのまま入力を忘れてしまうのは、横領に近い行為」(三宅社長)

 社員が日々の活動で得た顧客情報は、すぐに情報システムに入力するというルールを徹底しているという。

 ただ、従来の情報システムでは顧客情報の共有に時間がかかるなど、大きな課題を抱えていた。日本M&Aセンターには、譲渡希望企業から年間数百件の案件が寄せられる。

 その1件ごとに、100~150社の譲り受け希望企業とのマッチングが行われる。同社のコンサルタントは、双方がハッピーになるマッチングを提案しなければならない。

 この課題に対し同社は、2014年1月、新しい顧客管理システムを導入。そのベースになったのがSalesforceである。Salesforceの稼働後、各コンサルタントは素早く最適なマッチングを見出し、顧客に提案できるようになった。顧客接点での生産性は大きく向上し、導入前と比べ約30%のリードタイム短縮を達成。Salesforceの活用で2014年度も第2四半期の業績を上方修正するなど好業績を維持している。

財務データは過去実績、顧客情報は未来の経営判断の基礎

 さらに、同社にとって顧客情報は経営判断の基礎になっている。
「 経営とは未来に対するアクションです。対して財務データは過去のデータなので、それを基に経営判断を行うと、大変な誤りを犯しかねない」(三宅社長)

 同社はSalesforceを活用して、未来の成長をどのようにドライブしようとしているのだろうか?

経営トップ、経営企画室長、
現場コンサルタント(営業)

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