【変革の継続】
風土に合った仕掛けでなければ組織を変えることはできない
松江 持続的成長に向けては顧客との関係を持続させることが大事だと考えているのですが、御社はお客さまからニーズとか困りごとを聞いてくるとか、いろんな感謝をされるサービスを提供するといった継続的な関係を重視されている印象があります。
木川 もともと現場の第一線、お客さまとの接点についての評価は極めて高いです。宅急便を始めた小倉昌男さんをはじめとする先人の強力な戦略の成果だと思います。小倉さんは、様々なメッセージを発信されていますが、なかでも「サービスが先、利益は後」は名言です。現場に対しては、「お客さまのことだけ考えてお客さまのために役に立つことをやろう」と言うだけで、「儲けろ」とは一切言わない。お客さまのためにやれば、「利益は後から付いてくる」と。
でも、すべての人に同じことを言っていたわけではなかったはずです。本社の然るべき人には、「儲けも考えなければ」と言っていた。民間企業で利益を出さなかったら成長できませんから。でも、サービスをきちんとやれば評価が上がって、マーケットシェアが上がって、利益は付いてくるという軸足はブレない。「短期的利益」よりは「長期的成長」と、長い時間軸で見ている。そうした理念を社訓の唱和とかで言葉に出すだけではなく、自らの行動として社員に示すこともしていた。
松江 トップが行動で示すことはとても大切だと思います。
木川 これは最近よく話す逸話ですが、スキー宅急便を始めた1年目に上越地域が大雪により道路が封鎖されて荷物が届けられなくなったことがありました。でもお客さまは新幹線でスキー場に着いているのに、肝心のスキー板が来ないから現場が追い込まれる。
そのときの小倉さんは、「スキーは買ってあげなさい、借りてあげなさい、荷物で必要なものがあればそこで買ってくるようにしてあげなさい」と指示された。約款上は、われわれのミスではないので補償義務はないのに、たくさんのコストを払った。これが「サービスが先、利益は後」の典型です。
もし大雪になると使えないサービスとなったら、スキー宅急便を使う人はいなくなったはずです。そうなれば、ゴルフ宅急便も生まれていない。お金、コストをかけてでも、始めた商売、サービスに対する信用力をつけていった。こうした意思決定をみても、自らの理念を行動で示すことを実践されていたことがわかります。こうしたことは理念を浸透させるプロセスとして必要です。



