ANACargoと宅急便のヤマト運輸が、「沖縄国際物流ハブ(沖縄ハブ)」を活用したさらなるビジネスモデルの拡大に動き出している。ANACargoは社名でわかるように全日本空輸(ANA)グループの航空貨物事業会社。両社の提携強化がなぜ注目されるかと言えば、沖縄ハブ構想が両社が追及する戦略の“核”を成しているからだ。(カーゴ・ニュース記者 大澤瑛美子)
沖縄ハブ構想は、ANAが沖縄県の那覇空港を基点に日本とアジアの主要都市を航空貨物便ネットワークで結ぶ、スピード輸送モデルである。ヤマト運輸ではこのネットワークを活用して、同社の「国際宅急便」と「国際クール宅急便」をアジアへ最短翌日配達するほか、製造業や小売業界向けの高付加価値物流サービスも展開していく。先月、都内で開かれた両社の共同記者会見で、ANACargoの岡田晃社長は次のように語った。
「2社の持つネットワークとインフラをさらに強化し、沖縄ハブを21世紀の空の“万国津梁(しんりょう)”としていきたい」。
「万国津梁」は、「世界を結ぶ架け橋」の意。15世紀、沖縄の首里城に掲げられたという鐘に刻まれた銘文の一つで、当時の沖縄が朝鮮、中国、日本、さらには東南アジアまで広く貿易を行っていた歴史を伝えている。万国津梁という言葉に、岡田社長の熱い思いが伝わってくる。
ヤマト運輸の進出で活気づく
ANAの沖縄事業
沖縄ハブ構想では、日本およびアジアの主要空港を夜間に出発した貨物が那覇空港を中継し、それぞれの目的地へ早朝届けられる。人口20億人といわれるアジア市場のほぼ中心地に位置する沖縄の立地優位性と、24時間体制で通関および航空便の発着が可能な那覇空港の利点を組み合わせることで実現した。
ANAがこの構想を打ち出したのは、2007年。2年間の準備期間を経て、2009年10月には那覇空港の新貨物ターミナル供用開始にあわせ、敷地面積2万7700平方メートルのANA国際貨物上屋を開業し、8地点、48路線の運航を開始した。しかし、折しも08年にリーマンショックが発生。日本の輸出産業は大きな打撃を受け、航空貨物市場も急速に冷え込んだ。沖縄ハブ事業が長く厳しい局面に立たされる中、手を挙げたのがヤマト運輸だった。