「2020年に30%の女性管理職を」という政府目標もあり、今、企業では女性活躍推進の取り組みが本格的に始まっている。効果も大きいが課題もある。専門家の意見を聞いた。
山本幸美 代表取締役社長
リクルート、インテリジェンスで営業・人事コンサルタントとして勤務。2004 年にプラウド設立。代表として女性活躍推進やワークライフバランス事業に携わる。著書に『一生使える「営業の基本」が身につく本』(大和出版)など多数。
「今企業が女性活躍を推進しなければならない理由は企業が生き残るために必要だからです」と語るのは、女性活躍推進の研修やコンサルティング事業を展開するプラウドの山本幸美代表だ。その背景には少子高齢化による労働人口の減少があり、優秀な人材を確保するというシンプルな理由からも、企業内での女性の活躍が必須となるからだ。
また購買力のある女性の増加で、女性目線の企画やサービス、営業などが必要となり、それらの部署に女性リーダーを配置することで、実際に売り上げが向上する状況が生まれている。
「あるデータでは5年前と比較して、女性管理職の増加で売り上げが1.7倍に増加したという回答もあります。企業価値も上がり、株価も上昇。その結果、採用実績も向上するという好循環も生まれる。実際に、世界では女性役員比率の高い企業の方が経営指標が良いというデータもあり、いまや女性活躍の推進は、単なる人材戦略というよりも、グローバルな経営戦略といってもいいと思います」(山本代表)。
だが、女性活躍推進を実行するに当たって課題も多い。人事制度をつくっても「男性の管理職から賛同を得られなかったり、女性社員自身がキャリアアップする意欲を見せなかったりするから」だ。そのため女性社員の意識改革を促すキャリアアップ研修の他、男性管理職への研修も必要になるという。
「女性社員に対しては、さまざまなケースでの具体的なロールモデルを示してあげることが効果的です。男性管理職へは、女性活躍推進が経営戦略の重要な要素であることを徹底的に浸透させること。女性を活かせるリーダーが優秀なリーダーであるという評価を設定することも重要になります」。
一時期、ワークライフバランス(WLB)という言葉がはやり、導入した企業も多かった。ところが「女性活躍推進に取り組む前にWLBを導入したために、働きやすさだけが追求されて、逆に女性の向上心を奪ってしまう結果になっているケースが多い」という。そうならないために、女性活躍推進とWLBの施策を同時に推進することが肝要となる。
そもそも女性の働くモチベーションは、非金銭的な側面があるという。「自分のアイデアや企画を提案する機会があること、仕事を通じて自分の技術や能力を発揮できることなどが、金銭的な報酬よりも、女性のキャリアアップを促すことにつながるのです」と説明する山本代表。
女性のキャリアアップが刺激になり男性社員が奮起する効果もある。男女が共に活躍する企業、生き残るためのダイバーシティ経営を目指すならば、女性活躍推進への取り組みは欠かせないといえそうだ。