首脳が総力戦で
戦略策定に当たるべき

 つまり、アジア全体を俯瞰した統合や再編戦略とともに、国別の展開策が求められているのである。それを実現するには、日本本社の社長だけでなく CFOやCMO、CIO、CTOなどが総力戦として戦略策定に参加し、それぞれの立場での施策が全体最適につながるような取り組みがなくてはならない。

 見方を変えれば、調査・診断、スキームの立案・実行、ファイナンシャル・アドバイス、スキーム実行後の支援までの一気通貫、フルパッケージ型総合コンサ ルティングの活用が重要になる。だが、そうしたコンサルは少ない。実務のコンサルティングに特化すれば現地事情にしか焦点が当たらず、財務アドバイスに特 化すれば自立的な展開が可能な事業でも、不必要なM&Aを助長してしまったりすることもある。

 中国、アセアン双方に強いネットワークを持つ フロンティア・マネジメントは、現地ビジネスに詳しく、コンサルティング経験豊かなメンバ ーを擁する。また、上海・シンガポールの拠点をはじめとした幅広い現地のネットワークを活かし、中国進出支援ではコンサルティングから進出後の実務サポートまで、フルパッケージでサービスを提供する。アセアン進出支援では、主にファイナンシャル・アドバイザリーを中心にサービスを提供している。

「長期継続している中国事業において見直しを行う場合も、過去の業績を否定することができず、改革・改組が進まないケースがあります。そのため、事業再構築に際しては第三者の目から中国事業を俯瞰し、今後の方向性を検討することが重要で、外部コンサルタントの活用を検討する必要もあります」(中村氏)と、 現地に拠点を置き、常に市場をウオッチしているからこその深いインサイトを提供する。現地のメンバーはもちろん全員がバイリンガルで、日中の環境を熟知している。昨今、両国間で地政学的リスクが生じて多くの日系企業が撤退するなかにあって、拠点を維持し情報分析を継続している点も現在の信頼につながっている。

「アセアンの成長の果実を手にするためには、現地パートナーの発掘や個々の国の市場や需要などの情報の質とスピードが問われます。優秀な駐在員はもちろん、質の高い情報を基に戦略を現地のスピード感で進めていく実行力と現地化が大切ではないでしょうか」(村木氏)

アジアのビジネス環境は、まさに時々刻々と変化している。最近では日系企業がアセアン企業とともに中国進出を果たすなどのモデルも存在する。

 深い知見を備えながら迅速で機動的な経営決断ができなければ、その影響の震度は予想以上に大きくなるだろう。


Tetsutaro Muraki
上智大学外国語学部卒、ハーバード大学行政大学院修了。スイス銀証券会社東京支店、世界銀行ワシントン本部を経て、2003年産業再生機構に入社、マネージング・ディレクターに就任。2007年東京証券取引所に入社。2009年TOKYO AIM取引所の代表取締役社長。2012年フロンティア・マネジメントに入社し現職。

Toru Nakamura
北海道大学農学部卒。1981年トーメンに入社、食料本部に勤務。1992年から同社関連企業の海外拠点に勤務。トーメン、豊田通商合併後は、2006年豊田通商(天津)有限公司 副総経理、2008年豊田通商食料本部、食料事業部勤務。2014年フロンティア・マネジメント入社、マネージング・ディレクターに就任。