やるからには徹底的にやらなきゃ!

奥田 本の中でプラントを止めるというシーンも印象的だった。廃棄物を下ろしたダンプカーから液体が垂れ、社内の道路が汚れていたのを見て、お父さんはプラントの機械をすべて停止させて、社員に掃除をさせるでしょう。プラントを止めるっていうのは大変なことなんですよね。

石坂 製造業で言えば、つくった製品をすべて回収するくらい損失の大きいことなんです。そのときの父の剣幕がすごくて。「3Sを徹底するなんて言っておきながら、汚ねえじゃないか。口先だけかっこいいこと言いやがって。ふざけんな」と。
 でも、父の徹底ぶりを見て、「やるからにはここまで徹底的にやらなきゃダメなんだ」と学びました。

奥田 出張カウンセリングで全国を回っていると、いろいろな校長先生に出会います。校内でいじめ事件が起きても後手後手に回っているケースがほとんどです。
 ところが、ある中高一貫校の校長は、違いました。高校から入学してきた生徒が、初日に弁当を食べようとしたら、中身が捨てられてゴミを入れられていた。この報告を受けて、翌日全校集会を開き、校長が、
「このいじめは絶対に許すことはできない。解決するまで授業は行わない」
 と宣言した。見て見ぬふりを決め込んだ生徒や保護者からの苦情や非難を恐れず、校長は「学校全体の問題だから、これを解決するまでは前に進むことはできない」と強い姿勢を示したんです。
 そうしたら、その日のうちにいじめを行った子たちが校長室に謝りにきて、授業が再開になったのです。僕は数少ない偉大な校長を何人か見てきましたが、この校長は5本の指に入ります。

石坂 トップの姿勢として勉強になる話ですね。
(対談【その3】へつづく)

<著者プロフィール>
埼玉県入間郡三芳町にある産業廃棄物処理会社・石坂産業株式会社代表取締役社長。99年、所沢市周辺の農作物がダイオキシンで汚染されているとの報道を機に、言われなき自社批判の矢面に立たされたことに憤慨。「私が会社を変える!」と父に直談判し、2002年、2代目社長に就任。荒廃した現場で社員教育を次々実行。それにより社員の4割が去り、平均年齢が55歳から35歳になっても断固やり抜く。結果、会社存続が危ぶまれる絶体絶命の状況から年商41億円に躍進。2012年、「脱・産廃屋」を目指し、ホタルや絶滅危惧種のニホンミツバチが飛び交う里山保全活動に取り組んだ結果、日本生態系協会のJHEP(ハビタット評価認証制度)最高ランクの「AAA」を取得(日本では2社のみ)。
2013年、経済産業省「おもてなし経営企業選」に選抜。同年、創業者の父から代表権を譲り受け、代表取締役社長に就任。同年12月、首相官邸からも招待。2014年、財団法人日本そうじ協会主催の「掃除大賞」と「文部科学大臣賞」をダブル受賞。トヨタ自動車、全日本空輸、日本経営合理化協会、各種中小企業、大臣、知事、大学教授、タレント、ベストセラー作家、小学生、中南米・カリブ10ヵ国大使まで、日本全国だけでなく世界中からも見学者があとをたたない。『心ゆさぶれ! 先輩ROCK YOU』(日本テレビ系)にも出演。「所沢のジャンヌ・ダルク」という異名も。本書が初の著書。