床にエロ本、壁にヌード写真の会社が、
なぜ「掃除大賞」＆「文部科学大臣賞」を
同時受賞したのか？

憔悴しきった創業者の父を見て、「私が社長をやる！」と2代目社長になったのが30歳の石坂典子氏。地域から嫌われ、4割の社員には去られ、日々父から怒鳴られ……“絶体絶命”、いや「マイナス1万からのスタート」だった。
あれから12年。現在では、夏祭りに地域の人が700名訪れ、工場に煙突はなくホタルやニホンミツバチが生息。トヨタ、全日空、日本経営合理化協会、滝川クリステル氏、中南米・カリブ10ヵ国大使……日本全国だけでなく世界中からひっきりなしに見学者が訪れるようになった。なぜか？
初登場Amazon総合1位、発売3日で重版した話題の処女作、『絶体絶命でも世界一愛される会社に変える！』を発刊した石坂典子氏が、荒廃した社内環境にもめげずに、さぼっているおじさんたちと格闘して成し遂げた数々の改革を「トホホと思ったことベスト3」も交えて紹介する。

さぼっているおじさんたちを
注意して回るのが私の仕事

 いまから12年前、社内の雰囲気は、かつての人気ドラマ『スクール☆ウォーズ――泣き虫先生の7年戦争』（ＴＢＳ系）のようでした。

 エロ本が散乱し、社員はヘルメットをかぶらずにサンダル履き、くわえたばこで出入りする状態でした。

 当時、プラント（産業廃棄物のリサイクル工場）の周りにスーパーハウス（箱形のプレハブ式ユニットハウス）が6つあり、社員の休憩所になっていました。

 夕方6時までが就業時間なのに、5時頃になると電気がつきます。
「またか…」と思いながら勢いよくドアをあけると、居心地のいい休憩所の壁にはヌードグラビア。床にはタバコの吸い殻。5、6人が集まり、テレビを見ながらタバコをぷかぷかとふかしています。

「何やってんの？ 6時までは仕事だよ！」

 と言っても、悪びれる様子はゼロ。

「何だよ。きちまったぜ。面倒くせえな……」

 と言わんばかり。しばしにらみ合いが続き、社員たちはゆっくりタバコを消し、無言のまま、プラントへ戻って行きました。

 まるで不良高校生と生活指導教師のようですが、年齢はまったく違いました。

 私は30歳で、さぼっている社員の多くは40代～50代。
 さぼっているおじさんたちを注意して回るのが私の仕事でした。

まず、3Ｓを徹底！
6ヵ所あった休憩所を1ヵ所に

 こうした状況を改善するため、私は3Ｓ（整理、整頓、清掃）を導入しました。

 最初は整理です。不要なものは徹底的に捨てました。

 まずは、6ヵ所あった休憩所を1ヵ所に減らしました。
 これには社員たちが「ふざけんな！」と不満爆発！

 しかし、そもそも「理解してもらおう」とか「仲よく会社を改革しよう」なんて気持ちはさらさらありません。
 社員の反感を買っても、“脱・産廃屋”を達成するためならと、断固やり抜きました。

 ロッカーや引き出しをあけ、マンガやヌードグラビアをがんがん捨てさせます。すると、社員は見えないように別のところに隠すので、それを見つけて、また捨てさせる。それの繰り返しでした。

 そのうち、「そもそも隠すところがあるのが悪い」と気がつき、不要なロッカーを捨てました。

 こうすることで、社内にあるものはすべて見えるようになりました。

 次に取り組んだのが整頓です。
「もの、事、制度」を並べ替えました。

 工具を片づける棚を取りつけ、使うべき道具だけを用意し、その並べ方を考えて整頓します。

 知識の整理整頓としては、データの蓄積も始めました。

 コンピュータを導入して情報を整理整頓するとともに、マニュアルを整備して社員の1日の動きや、作業の手順、仕事を進めるうえで必要な仕組みなどを整理整頓したのです。