わが子に「一生モノの自信」をつけさせるには、どうすればいいのか?
そのために親がしてやれることは?

特に組織で重要な役割を持つようになり、仕事が忙しさを増す40代、50代のお父さんは、どうしても子どものことをお母さんに任せてしまいがち。今回は、開成学園校長・柳沢幸雄先生に、子どもの自信と「父親の役割」についてうかがいます。

同性の親にしか教えられないことがある

――忙しさから、子どもの教育を母親任せにしてしまっている家庭も少なくありません。

柳沢 確かに日本では、家庭内での男親の存在感が薄いですよね。母親が、ほぼひとりで子どもの教育を担っているケースも多く見られます。ですが、物理的には夫婦として存在しているけれど実際に機能していないというのでは、居ないのと一緒。子どもにとっては迷惑な話です。

 子どもの自信を育くむうえで、親の存在が非常に重要だということは、前回もお話しましたが、特に男の子の教育に関しては、父親が子どもと“どう向き合うか”が大きなカギになります。

――それはなぜでしょうか?

柳沢親は、自分の子どもに対して“期待”と“可愛さ”を抱きますが、異性の子どもに対しては“可愛さ”ばかりを抱いてしまいがち。なぜなら、成長して変化していくプロセスを自分自身が辿っていないから、具体的なアドバイスの仕方が分からない。同性の子どもに対しては、自分の経験値に照らし合わせて、どうすれば社会のなかで生き残れるかを随所で伝えているものですが、異性の場合、そういう視点がなかなか持てません。

 ですから、男の子が成長していく上で、父親が自分の経験を伝えていくことが大きな意味を持ちます。シングルマザーやシングルファーザーの方々は、あらかじめその辺りを意識して努力されているケースも多いのですが、物理的に夫婦が揃っている場合には、それが難しいようですね。

柳沢幸雄(やなぎさわ・ゆきお)
東京大学名誉教授。開成中学校・高等学校校長。シックハウス症候群、化学物質過敏症に関する研究の世界的第一人者として知られる。1947年、疎開先・千葉県市川市の母の実家で出生。1971年、東京大学工学部化学工学科を卒業後、日本ユニバック株式会社にシステムエンジニアとして勤務し、激務のかたわら、週15時間英語の勉強に打ち込む。1974年、水俣病患者を写したユージン・スミスの写真に衝撃を受け、化学工学を勉強すべく、東京大学大学院工学系研究科の修士課程・博士課程に進学。この頃、弟と一緒に学習塾の経営を始める。東京大学工学部化学科の助手を経て、1984年にハーバード大学公衆衛生大 学院環境健康学科の研究員の職を得て、家族を連れ渡米。その後、ハーバード大学公衆衛生大学院環境健康学科の助教授、准教授、併任教授として空気汚染の健康影響に関する教育と研究に従事、学生による採点をもとに選出される「ベストティーチャー」に数回選ばれる。1999年、東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻教授に就任。2011年より現職。