東日本大震災以降、電気料金は上がり続けている。一方電力システムの見直しが進み、地域電力会社が独占する体制から、自由化に向けて動き始めている。その中で注目されているのが、低コストの高圧電力でマンションの電気料金を低減する「高圧一括受電サービス」だ。
「高圧一括受電サービス」とは、マンションなどの集合住宅で各戸ごとに地域電力会社から低圧で購入していた電気を、集合住宅全体で高圧のまま一括購入し、低圧に変換して各戸と共用部に供給するサービスである。大口ユーザー向けの高圧電力は、低圧電力に比べて料金が安いため、その価格差によって電気料金を削減することができるというものだ。
既存のマンションにも
導入可能
低圧電力が高圧電力に比べて料金が高いのは、発電・変電所からの電力を各家庭に供給するまでの間の「配電コスト」が発生するためである。電気料金は、電力を供給するのに効率が良い都市部であっても山間部などの効率が悪い場所であっても、公平に電気が使用できるよう“総括原価方式”で規制されている。高圧一括受電サービスでは、マンション管理組合に代わり、一括受電業者が地域電力会社と高圧契約を結び、マンション敷地内の受変電設備から各戸に供給するという方式を取る。工場や商業ビルなどの大規模契約者の仕組みを、マンションに取り入れたサービスなのだ。
最近の新築マンションでは、このサービスを標準装備するケースが増えているが、既築マンションでも一定の条件をクリアすれば(戸数や築年数など)、後から導入することが可能である。しかも受変電設備のコストは一括受電業者が負担する場合が多いので、管理組合や居住者の初期負担はゼロだ。ただし既築マンションの場合、地域電力会社と各戸が結んでいる契約を一度破棄して、全住戸契約を一括受電業者と結び直す必要があり、1戸でも同意しなければ導入できない。理事会や総会で全住民の了承を得ることが必須であり、そのためにも同意を取り付けるサポートがある一括受電業者の選択が肝要となる。
スマートメーターとの
連動で節電
このサービスと連動しているのが電力のスマート化だ。高圧一括受電サービスの導入に合わせて、従来の電力メーターから通信機能を持たせたスマートメーターに替えるケースが増えているのだ。スマートメーターを付けると、各自でも使用電力量を月別、日別、時間別に見ることができるため、高単価の時間帯の電気使用を控えたり、分散して利用することで電気代を安く抑えることが可能になる。いわゆる電力の「見える化」で節電意識が高まるメリットがある。
導入に関して、一括受電業者の配電に替わることから、「電力の質が悪くなるのでは」という誤解もあるが、供給される電力は地域電力会社から購入するものなので、電気の質は従来のものとまったく変わらない。電気料金の値上げで共用部の経費も増大しており、マンション管理組合にとっては願ってもないサービス。エネルギー関連の新しいスキームとして認知度も向上しており、既存マンションへの導入は急速に拡大している。