マンション施工と
管理の実績が生きる
同社の高圧一括受電サービスが評価される理由は、長谷工グループとしてマンションの管理受託戸数が約30万戸に及ぶなど、マンション管理について豊富な実績とノウハウを持っている点にある。このサービスを導入するには、全電気利用契約者の契約変更が必要であり、一戸でも反対があれば導入はできない。
「全電気利用契約者の同意に至るまでが一番のポイントなのです。当社では、導入のメリットを十分にご理解いただけるよう、理事会や入居者の皆さまに対し動画を使った説明会を必要回数実施し、全同意取得までのサポートを根気強く行います。当社には長年マンションのコミュニティづくりに携わっている経験があるからこそ、スムーズに同意を得ることができていると考えています」
この評判を聞き、他社での導入提案に全同意を得られなかった管理組合からの依頼を採用につなげた実績もある。
パソコンやタブレット端末などで、電気料金だけでなく、自宅の電力使用量を30分単位で確認できる。月ごとや年ごとのチェックもでき、前日、先月、前年などとの比較も可能。節電意識も高まり、自宅の電気料金削減にもつながる
もとより長谷工グループは、施工実績が約56万戸と、マンション建設では圧倒的な実績を持っている。電気供給はライフラインであり、マンション全体の電気インフラを支える技術力は重要な検討要因となる。その点、同社の技術とサービスにおけるブランド力は、導入を検討する管理組合にとって、大きな安心材料になっているようだ。そうした総合力によって、他社では技術的に困難と判断されたマンションへの導入提案も行っている。
また、同社の高圧一括受電サービスでは、各戸にスマートメーターが「初期費用ゼロ」で標準装備されるのが特徴だ。スマートメーターは、共用部・専有部共に設置され、30分ごとに使用電気量を測定する。パソコンやタブレット端末などで電気使用量や電気料金を確認することができるため、居住者の節電意識が高まり、電気料金を安く抑えるメリットも発生する。
電力自由化後も
優位性は継続
電力小売りの全面自由化や発送電分離を前に、慌てて導入して不利益が生じないかなどを理由に、高圧一括受電サービス導入に踏み切れずにいる管理組合も増えてきているという。
「今後自由化されたとしても、新規小売業者が負担する必要がある送配電託送料(高圧送電託送料+低圧配電託送料)は規制されており、競争が生じません。よって電気料金が、今より安くなる理屈がないのです。発電料金も誰もが同等にオープンな市場から調達するため、特定の小売会社だけが安く調達できるとは考えにくく、欧米では、電力自由化で逆に電気料金が上がった例もあります。『高圧一括受電サービス』の場合は、低圧配電託送料が掛からないので、電力システムの改革が進んでもコストの優位性は継続すると考えられています」と杉本部長は説明する。
「また、電力自由化後に導入マンションにおける対応の可否を心配される方もいらっしゃいますが、国としてもスマートマンション導入加速化推進事業として当サービスを促進してきた背景もあることから、対応可能な法改正がなされると期待しています」
高圧一括受電サービスは、いわば家庭向け市場の電力自由化を先取りしたサービスとも言える。早期導入で、享受できるメリットが大きくなると期待できそうだ。