若者と高齢者
二つの独身時代

 少子高齢化の話題は、とかく空き家問題などネガティブな問題と結び付けられがちだが、実際には今、「世帯の細分化が、縮小傾向の住宅市場を下支えしている」という意見もある。

「高度成長期には、農村部から都会に出てきた人たちが核家族となり、世帯数を増やし、それに伴って住宅が増えることで、経済が活性化しました。今、日本は人口減少局面に入りましたが、世帯数は減っていません。それどころか、意図しなかった世帯の細分化により、必要とされる住宅の数は増えています」

大久保恭子
1979年、リクルート入社。「週刊住宅情報」編集長を経て、2003年より日立キャピタルでマーケティングを担当。07年にポータルサイト「マンション評価ナビ」を開設。11年、一般財団法人住まいづくりナビセンター理事。マンション・一戸建てのマーケティング・商品開発に詳しく、国土交通省社会資本整備審議会住宅宅地分科会専門委員、不動産流通市場活性化フォーラム委員などの公職も歴任している。

 そう語るのは、ポータルサイト「マンション評価ナビ」を主宰し、長く戸建てやマンションのマーケティングに携わってきた大久保恭子氏。

 従来、住宅市場の主役だったファミリー層に代わって、主役に躍り出たシングル層には、二つの顔がある。一つは従来からの独身者層。もう一つは離婚や死別でシングルに戻った層だ。

「特に元気がいいのが夫と死別した高齢女性で、70歳を過ぎても家を買いたい、建てたい、賃貸経営をしたいという人が少なくありません」(大久保氏)

 現在、日本人女性の平均寿命が86.61歳で、男性が80.21歳。平均寿命とは出生時における平均余命のことだから、すでに70歳まで生きた人は、平均寿命より長い「人生90年」を見越して残る日々を計画する。

「あと20年」の充実のためなら、家を新築する気も起きようというもの。大久保氏の周囲には、70~80歳で「映画のような回り階段のある家」や「夢だったアトリエ付き住宅」を建てた女性もいるという。

 一方、若い独身者層も、晩婚化により独身時代が長くなってきている。そうした人々に向け、「ペットの猫付きマンション」や「ワインセラーのあるマンション」「自転車マンション」など、特徴のあるコンセプト賃貸が続々登場してきている。

 シングル層は“持ち家派”とは限らない。資産活用を考えたい人とシングル層を結んで、「個性的で質が高い賃貸」というビジネスが広がっているわけだ。