国民投票を経ても
ギリシャの混乱は
収まらない

 本稿執筆(7月2日)時点で、ギリシャは債権団に譲歩したとの未確認の情報もあるが、チプラス首相は自らテレビで演説し、緊縮財政受け入れノーに投票するよう訴えるなど、強気の姿勢を崩していない。国民投票が5日に予定通り行われれば、本誌発売時点ではいずれかの結果が出ているだろう。しかし結果が緊縮財政受け入れに賛成でも反対でも、ギリシャとユーロ圏各国にとってはいばらの道が待っている。

 下図は、国民投票後のギリシャ問題のシナリオを整理したものだ。

 緊縮財政に賛成と決まった場合はどうなるか。一つ目のシナリオは、決まった以上、政権が緊縮財政を受け入れるというもの。チプラス首相はノーを唱えていた以上、辞任した上で、急進左派連合を中心とした連立政権が樹立する。6月末の1週間の銀行閉鎖で、預金封鎖の怖さを思い知らされ、ユーロ離脱は避けるべきだという現実路線の有権者が増えている。もともと急進左派連合は寄せ集め集団だっただけに、「反緊縮」から「ユーロ残留」に旗印を変えた連立となる。ただし、緊縮財政を受け入れるに当たり、増税や社会保障の削減などで国民に痛みを伴うのは確実だ。

 連立政権が崩壊し、解散総選挙に追い込まれる可能性もある。二つ目のシナリオは、解散総選挙後にできた新政権が緊縮財政を受け入れるというもの。サマラス前首相が率いる新民主主義党が第1党になる可能性が高い。サマラス党首は急進左派連合の失策を追及し、「ユーロ離脱よりは緊縮の方がはるかにまし」という世論形成を行っていくとみられる。

 三つ目のシナリオは、解散総選挙を行った後に、急進左派連合が第1党に選ばれるものだ。ギリシャ国民の間に緊縮財政へのアレルギーが高い上、「いざとなればEUは見捨てないはずという楽観論を根拠なく信じている国民が少なくない」(アナリスト)。この場合は、「白か黒かがはっきりしない最悪のシナリオ」(市場関係者)だ。マーケットの警戒感は強いだろう。

 国民投票でノーが突き付けられた場合に出てくるのが四つ目のシナリオだ。チプラス首相は債権団に対して強硬路線を貫き、資金が底を突き、年金などが借用証書(IOU)で支払われるケース。ギリシャ国内にIOUとユーロとの交換マーケットができ、それが事実上の通貨になっていく。こうなれば事実上のユーロ離脱だ。

 五つ目のシナリオは、国民投票で緊縮財政を受け入れなかったにもかかわらず、債権団の金融支援は打ち切られず、ユーロにとどまるケースだ。チプラス首相はこの虫のいい選択を期待している。

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最悪のシナリオ、ユーロ離脱もあり得る

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