「東京を虹のステッカーで埋め尽くす」――。新型コロナウイルスの感染者発生が止まらない東京都。小池百合子知事は店舗が感染対策に取り組んでいることを示すステッカーの普及に熱を上げている。しかし事業者へのチェック機能は事実上なく、対策への取り組みは条例でも努力義務にとどまっており、ステッカーの実効性に疑問符がつく。(ダイヤモンド編集部 岡田悟)
緊急会見で突然、相撲の「告知旗」を披露
忘れられないクールビズの成功体験
8月2日に千秋楽を迎えた大相撲7月場所は、横綱・白鵬がケガで休場。東前頭17枚目の照ノ富士が13勝2敗で優勝を決めた。ケガや病気で一時は序二段まで番付を下げたが、そこから8場所目で幕内優勝を決めるというドラマチックな展開が感動を呼んだ。
大相撲も新型コロナウイルスの感染防止対策として、会場を例年の名古屋から東京の両国国技館とし、観客を本来の4分の1に当たる2500人に制限する異例の開催となった。異例だったのはそれだけではない。
「ステッカーのお店に」「手洗いマスクの徹底」「NO!3密」――。
取組に勝った力士に与えられる懸賞を出す企業の広告が描かれた「懸賞旗」に倣って、このように書かれた「告知旗」を、「呼出」と呼ばれる職員が掲げて土俵の上を歩いたのである。
これは東京都と日本相撲協会によるコロナ対策のアピールだ。もっとも、告知旗が最初にお目見えしたのは国技館ではない。7月30日午後5時、普段の定例会見とは異なり、都の主催で急遽開かれた小池百合子東京都知事の緊急記者会見の場だった。
発表の目玉は、「酒類提供を行う飲食店およびカラオケ店等」の午後10時以降の営業自粛要請だった。ところが、途中から話題は相撲へと転じる。
「日本相撲協会にもご協力いただき、開催中の大相撲7月場所で、7月31日から千秋楽の日曜日にかけて1日3回、懸賞旗スタイルの『告知旗』を掲出させていただくことになりました」――。
小池知事の発言に合わせて、事前に紙を見て入念に打ち合わせをしていた報道課の職員が前に立ち、告知旗を広げてアピール。一斉にカメラのフラッシュがたかれ、小池知事は満面の笑みを浮かべていた。この日の都内の新規感染者数は367人と、当時過去最多となっていた。