ギリシャ自らを追い込み
国民生活を犠牲にする国民投票
加盟国が19ヵ国まで拡大したユーロ圏から、初めて離脱する国が出現するリスクが高まった。ツィプラス・ギリシャ首相が6月27日に発表した国民投票の実施は、ギリシャの銀行危機を加速、自らをユーロ圏からの離脱に追い込むリスクがある。
ツィプラス・ギリシャ首相は6月27日に、IMF(国際通貨基金)、欧州委員会、ECB(欧州中央銀行)から構成される債権者が示した緊縮措置を受け入れるかどうか、7月5日の国民投票で問うとした。
国民投票に対しては、15年5月にはドイツ政府からも早期の実施であれば容認するとの声があった。筆者も当時、反緊縮を掲げ15年1月の総選挙で勝利したツィプラス・ギリシャ首相が、緊縮措置を受け入れる正当性を確保するために、遅くとも15年6月半ば、すなわち、第2次金融支援の枠組みが失効する15年6月末の直前には、国民投票を実施と予想していた。
しかし、今回の国民投票は第2次金融支援の枠組み終了後に実施されるだけに、ギリシャの預金者、すなわち国民を一段と混乱に陥れることになろう。なぜなら、ギリシャ政府は6月30日のIMFへの返済に対処できないと見られるが、ECBは7月に、金融支援を受けられず支払い能力を失ったギリシャ政府発行の国債を多く保有するギリシャの市中銀行は存続困難と判断、市中銀行に対する融資(緊急流動性支援)を打ち切る可能性があるからだ。
この場合、ギリシャの市中銀行は中央銀行からもユーロを調達できず、流動性逼迫に直面、預金者は長期にわたり銀行から預金を引き出せないリスクがある。ツィプラス・ギリシャ首相が国民投票を発表した背景には、強引に緊縮措置を受け入れようとすれば、連立与党が瓦解、政権が倒れる事態を懸念したと見られるが、今回のギリシャ政府の対応は、国民生活をさらなる混乱に陥れかねない。