債権団もチプラス首相の手には乗らない。一番左はドイツのメルケル首相。その隣はIMFのラガルド専務理事。Photo:AP/アフロ

 チプラス首相はロシアのプーチン大統領と笑顔の写真をメディアに撮らせるなどして、地政学でEUに揺さぶりをかけている。ロシア接近を見せることでEUから譲歩を引き出したいようだが、アナリストの間では「ロシアも資源価格下落と景気低迷で、ギリシャを支えることはできない」と冷ややかな見方が多い。

 他方、中国は6月にも李克強首相がギリシャを訪問し、ギリシャ国債の購入に前向きな姿勢を見せるなどして、漁夫の利を狙っている。ただ、チプラス政権の強い味方になるとは考えにくく、「中国が投資先として興味を持っているのは、EUの一員としてのギリシャであり、ユーロ離脱後のギリシャにメリットを感じるとは限らない」(アナリスト)。

最悪のシナリオ
ユーロ離脱もあり得る

 チプラス政権の瀬戸際戦術は、ユーロ圏各国を大きなリスクにさらしている。もしもギリシャが反緊縮路線を貫いたことでデフォルトとなり、ユーロ以外の通貨が流通するなどして、事実上のユーロ離脱が起これば、その損失は計り知れない。

 下表のように、ギリシャは短期国債を発行しては運転資金に充てている。デフォルトとなれば、短期国債は発行できなくなり、あっという間に資金調達に窮するのは確実だ。

 前述したように、ユーロの代わりにIOUを流通させることになれば、事実上の二重通貨となり、自国通貨のドラクマ復活も現実味を帯びてくる。ただし、ユーロとの交換レートはとてつもなく高くなり、輸入に依存しているギリシャ経済は立ち行かなくなる。インフレが加速し、自国通貨の価値は加速度的に下がるだろう。

 景気刺激策を打とうにもない袖は振れない。年金や社会保障の削減が進み、低所得層の生活はインフレもあって悪化し、デモも多発。社会不安も増すだろう。だからこそギリシャにとって、ユーロ離脱は避けたいシナリオなのだが、チプラス政権の姿勢を見る限り、あり得ないとは言い切れない。

 防波堤の構築によって、ギリシャ危機の周辺国への波及は限定的とみられているが、ユーロ離脱という想定されたことがない事態が起きれば、マーケットが動揺するのは確実だ。ギリシャ危機は未知の領域に突入した。

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