サービスが街を回していく仕組み

workshop湘南Tサイト内のワークショップ施設。この日は子ども対象に、鶏を解体し、料理して部位ごとの味を確かめた後、骨格標本をつくるプログラムが行われていた

 街を案内してもらった。湘南Tサイトには、蔦谷書店が入っている。

「毎週、代官山に行かなくて済むようになりました」と、近隣住民の男性。週末になると8000~1万人が訪れるという。ちなみに藤沢SSTの入居者は7月末で約200世帯である。

 商業施設内にはSSTマネジメントが入っている。同社がエネルギー、セキュリティ、モビリティ(レンタカーやカーシェア、電動レンタサイクルなど)、ウェルネス(健康サポート)、コミュニティという5種類のサービスを受け持つ。普通はコミュニティ活動というと自治体や住民組織が「仕事を分け合う」ものだが、ここでは自治組織の下、「サービスとして提供される」のが大きな違いだ。

「ここのレンタサイクルを借りて、夫婦で鎌倉散歩に行くのが楽しみ。片道30分で途中にアップダウンもありますが、電動なので非常に楽です」と、住民の60代男性。

 街全体が高い環境目標を掲げ、現実に成果を上げている。スマートタウンの良さを実感したのが、街の中央のコミッティセンター(集会所)に入ったときだ。

コミッティセンター(集会所)の屋根にはソーラーパネルがずらり。戸建て街区の屋根にもパネルが搭載されている


 猛暑が続く中、ふだんは子どもであふれる公園には、人っ子ひとりいない。代わりに太陽光発電の電気で冷房したセンター内が遊び場に開放されている。「朝からみんなで、ラジオ体操とようかい体操第1をした」と元気いっぱいの小学生。SSTマネジメントのスタッフが見守っているので、親は安心して子どもを遊ばせられる。

 戸建て街区の道は、ほどよく風が抜けるように設計され、家々はつくりにもよるが、ほぼエネルギー自給自足が実現できるという。

 先進的な試みに国内だけでなく、海外からの視察も多い。海外の人は、完成度の高い街のテクノロジーに目を奪われるようだが、住民は、各種サービスの充実度、何より暮らしていて楽しいことを高く評価している様子だった。